表題番号:2011B-328 日付:2012/04/02
研究課題中等教育の数学における電子教科書と電子教材の活用と効果に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 吉田 賢史
研究成果概要
現在,ソーシャルメディアを活用したソーシャルラーニングが注目され,以下の2つのアプローチによる実践がある.第1のアプローチは,twitterのようなマイクロブログによる生徒の「つぶやき」から生徒の考えを引き出し,消極的な生徒の授業への積極的な参加を促すアプローチである.これは,一方向的に陥りがちな授業に双方向性を持たせるものである.第2のアプローチは,FacebookなどのSNSを活用した「学びの場」の提供である.「学びの場」としてSNS上にグループを作成し,授業資料やtwitterの意見を共有する試みである.これは,ソーシャルメディアをLMSの代替として活用するものである.これまで我々は,言語活動を重視した双方向の授業展開を目的とした第3のアプローチとして,T2VPlayerによる教材制作システムを提案し,教材コンテンツを生徒自ら作成する学習形態の重要性を提案してきた.しかしながら,これまでの我々の研究では,作成した教材コンテンツを生徒同士が共有し,コメントしあう機能は提供されていない.そこで本研究では,生徒が作成した教材コテンツを共有しあう機能を提供し、クラウド上に協調学習が行えるソーシャルラーニングシステムの構築を試みた。
システムの有用性を調べるため、このシステムを利用した学習者の自由記述形式で書かれ感想の中から、楽しさの理由を, テキストマイニングの手法により分析をおこなった.「楽しさ」の理由に記述された88の文章からキーワードを抽出し, 対応分析のおこなった分析結果は、次の通りである。軸の表す意味を, 第1軸が, 「楽しい・楽しくない」を表す軸と解釈し, 第2軸が, 学習に対して「能動的・受動的」を表す軸と解釈した.原点付近にプロットされていることから強い関係性は認められないが, 「まぁ, 楽しい」という属性と「自分」, 「動画」, 「作る+できる」の関係性が見られた.これらの中で「作る」を含む主な原文は,
・自分の好きなように, しかも簡単に作ることができるので
・物語を作るのは楽しいけど時間がかかるから.
・自分で番組を作る感覚で, できたときの快感がよかった
・動画を作るのは勉強になり, いいが, 文を形成するのが, 苦手だから.
・ただ復習するよりもよく覚えられて, 自分で作ったものや, 人の作ったものを見るのが楽しいから.
・自分で作った番組を, みんなに見てもらえ, コメントをもらえるから, まぁ楽しかった.
・番組を作るのは楽しいが初めてだったので疲れたから
・自分でアニメーションを作って, それを公開できるから
であった.
学習者にとって「楽しさ」は, 学習を継続するために必要な要素である.学習者の多くは, 少なからず「楽しさ」を感じている. また, 「楽しくない」と答えた生徒も, コメントし合うことは, 「為になる」と感想を伝えている.つまり, 「学び」につながると考えていると解釈できる.コメントし合うという本質的な学習スタイルは, 生徒自身が評価しており協調的な学習がクラウド上で展開できたと考えられる.
今後, 情報モラルなどの展開も含め, 他教科にも呼びかけ, 教科による差違, 学習者の学びのスタイルによる差違についてさらに分析する必要がある.
また, 協調的な学習が促進されるために, 教員はどのようなファシリテーションを施すべきかについて, 今後検討しなければならない.