表題番号:2011B-316 日付:2012/03/13
研究課題高等学校における「微分方程式」をテーマとした数学教育およびその教材に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 浦野 道雄
研究成果概要
 本年度は、中高生の学力低下を防ぐため、数学教育の在り方および教材の研究を行った。
 学力低下は学習者の意欲不足によるところが大きい。そこで、今年は、学習者の意欲を向上させる教材作りを目的とした研究を行った。特に、先述の教材にふさわしい内容の情報収集に、研究期間のほとんどを費やすこととなった。
 教材の題材は微分方程式である。微分方程式は高等学校の学習指導要領の枠組を超える内容だが、高等学校の枠組を超えるからこそ、学習者の知的好奇心をくすぐる可能性が高い。実際、高等学校で学ぶ項目をいくつか組み合わせて使うことで、簡単に解析できる微分方程式もあり、このような問題は、得られた結果も具体的に高校生の理解しやすいものが多い。
 このような観点から、いくつかの微分方程式のモデルを選び、高等学校において微分方程式に関する授業を展開した。その中で、適宜、アンケート調査等を行うことで、先述の目的を果たす教材にふさわしい題材の精査を行った。
 この授業では、微分方程式の解析に用いる数学の道具の厳密性については敢えて目をつぶり、これらの道具の応用の仕方を身につけさせることに主眼を置いた授業展開をした。数学は学問の性質上、厳密性を重要視するべきものであるが、初学者の段階からそれを要求すると、長い数学のストーリーの中で、自身がどこに立っているのかが分からなくなってしまうケースが多いようである。
 前述のような授業展開に対してアンケート調査を行ったところ、「この授業でやりたいことの全体像がつかめた」、「どの部分が厳密性を欠いているのかを提示しながらの授業だったので、いずれそこを自分で埋めようと思った」等、こちらが狙っていたような学習効果があったと判断される。
 今年度の研究の成果として、この授業を通して得たアンケート結果およびその後の考察を経て、「高校生のための微分方程式」と題したテキストを作成した。ただ、このようなテキストとして十分な内容を盛り込んだものを作成するには、単年だけではなく中長期的なデータが必要であると感じている。そういった意味で、現段階では改善の余地が多く、今後も継続して、同様の研究を進めたいと考えている。