表題番号:2011B-294 日付:2013/11/04
研究課題朝鮮近代文学の形成過程と日本(語)および諸外国(語)との関連研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際学術院 教授 布袋 敏博
研究成果概要
資料について、この間休むことなく韓国、日本、中国、米国、ロシアなどの図書館等を回って収集してきた結果、この時期の研究に欠かすことのできないいくつかの資料を収集することができた。まず、1910年代、東京で発行されていた朝鮮人留学生雑誌『学之光』や『女子界』(いずれも朝鮮語)を、新発見を含み集められる限り最大限に集めることができた。また、韓国併合前の資料として、ソウルで発行されていた『帝国新聞』を、活字本として販売されていないものも含めすべて収集できた。ついで、19世紀末に日本人たちが朝鮮の地で発行した朝鮮語紙『漢城新報』についても、現在見られる限りのすべてを収集・調査した。これらは、朝鮮近代文学が20世紀初頭にその形を成してくるにあたって、朝鮮語がどのように変化し、近代文学を表わすに足る「近代語」としての朝鮮語を形成していくのかを探るうえで、欠かすことのできない第一次資料のひとつである。本研究テーマである、朝鮮語が、近代文学、近代思想を盛るに足る近代文学言語として発達していった過程を明らかにするのに不可欠の資料である。本研究は、その際に西洋(語)や日本(語)からの影響をどのように受けたのか、もしくは多くが朝鮮語自体の自律的な発展によるものなのか、あるいは自律的な発展様相が見られるとすれば、それはどのようなものであったのか、などを、文学を通して明らかにすること、形式・形態や盛り込まれた主題ばかりでなく、言語事態として「近代」を表現しうる言語として発達し、「近代文学」を形成していく過程を具体的に明らかにすることを最終目標としているが、その出発点に立てたとはいえる。ただ、当初意図していた、開化期当時の留学生の日記については、目星をつけていたその遺家族に接触はしたが、日記の閲覧・入手はもかなわなかった。こうした資料に関しては後日を期すしかない。本研究はまだその航海に出たばかりである。今後何らかの成果を上げるにはまだしばらくの時間がかかりそうである。