表題番号:2011B-285 日付:2012/03/13
研究課題重量級アスリートに対する競技力向上を目指した健康的な増量介入研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 樋口 満
(連携研究者) スポーツ科学学術院 教授 川上泰雄
(連携研究者) スポーツ科学学術院 教授 坂本 静男
(連携研究者) スポーツ科学学術院 准教授 鳥居 俊
(連携研究者) スポーツ科学学術院 助教 河野 寛
研究成果概要
 本研究課題は、体重制限がないコンタクトスポーツ系選手において、体重増加が三つのテーマ(①エネルギーバランスの調節、②パフォーマンスの向上、③生活習慣病リスクの進展)に及ぼす影響を解明することを目的とした。今年度はその中でも、テーマ①として体重増加に伴う身体組成の変化が内臓量と基礎代謝量へ及ぼす影響と、テーマ③としてスポーツ選手の身体的特性と生活習慣病リスクの把握、および体重増加が生活習慣病リスクに及ぼす影響の解明を行った。
 今年度は、横断研究に加えて2010年度開始の縦断研究を行い、本学米式蹴球部および運動習慣のない学生計53名を対象とし、身体組成、基礎代謝量、体力、血圧、採血による一般生化学的指標、身体活動量や栄養摂取量の測定評価を行った。
テーマ①の研究においては、米式蹴球部1年生の1年間で9.0kgの体重増加に伴い、骨格筋重量が31.7±3.0kgから34.2±3.6kg、心臓重量が0.26±0.07kgから0.29±0.06kg、腎臓重量が0.34±0.03kgから0.37±0.05kgと有意に増加した。基礎代謝量においては有意な増加が認められた(Pre:1646±120kcal/day、Post:1723±189kcal/day)。しかし、肝臓重量に有意な増加は見られなかった。肝臓および、腎臓の増加量と基礎代謝量に有意な相関関係(⊿肝臓:r=0.630、P<0.05、⊿腎臓:r=0.655、P<0.05)が認められたことから、基礎代謝量の増加には、肝臓および腎臓の重量の変化が関係していること明らかになった。そして重回帰分析より、基礎代謝量の増加には特に腎臓重量の増加が及ぼす影響が大きいことが示唆された。
 本研究テーマの成果として、2011年度第62回日本体育学会にてポスター発表を行った。また、2012年度European College of Sports Scienceの第17回学会において発表を行うため抄録を提出済みであり、現在本研究テーマで論文を執筆中である。
また、テーマ③の研究により、米式蹴球部選手の中でも特に体格の大きさを求められるライン選手は、他のポジションの選手に比べ有意に体脂肪率が高く内臓脂肪断面積が多く、インスリン抵抗性も高いことが判明した。また米式蹴球部1年生において1年間の体重増加に伴い、内臓脂肪断面積が33.1±11.4 cm2から70.5±28.0 cm2、収縮期血圧が116.3±8.3mmHgから130.3±10.4mmHg、拡張期血圧が61.8±5.6 mmHgから69.2±9.0mmHgと有意に増加したが、インスリン抵抗性は有意に増加しなかった。以上のように、全体として悪化した指標はあったものの、選手の生活習慣病リスクは低かった。
 本研究テーマの成果においては、2011年度第5回Asia-Pacific Conference on Exercise and Sports Scienceにて口頭発表を行った。また現在論文執筆中であり、2012年度中に投稿および受理を目指す。