表題番号:2011B-283 日付:2012/04/03
研究課題34時間完全断眠の運動時の循環機能への影響ー糖代謝、心拍出量からの検討ー
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 坂本 静男
研究成果概要
本年度は34時間完全断眠による運動時の循環機能への影響を主に検討した。若年者10名を対象とし、断眠による自律神経機能および内分泌機能への影響を調べ、そのうえで運動時の循環機能の変化との関連を検討した。その結果、断眠により朝および午後の時間帯における自律神経活動全体の亢進、特に午後の時間帯における副交感神経活動の亢進が認められ、また、朝および昼の副腎皮質刺激ホルモン濃度の増加が認められた。ただし、副腎皮質刺激ホルモンによって分泌が促進されるコルチゾールには断眠の影響が認められなかった。また、断眠は午後の最大運動時における運動時心拍数を低下させた。これらの結果より、断眠は副交感神経活動の亢進および内分泌機能の低下を引き起こすことが示唆され、それらの変化が運動時心拍数の低下に寄与することが示唆された。断眠による運動時の循環機能への影響を明らかにするうえで、重要なデータを提供すると考えている。これらの研究成果は、16th Annual Congress of the European College of Sport ScienceおよびThe 5th International Sport Science Symposium on "Sport Sciences for the Promotion of Active Life"にてポスター発表により公表をおこなった。また、原著論文として国際誌(International Journal of Sports Medicine)へ投稿中である。さらに、若年男性10名を対象とし、34時間断眠の血糖値、インスリン、遊離脂肪酸への影響を検討した。その結果、断眠により血糖値およびインスリンが高値を示し、朝の時間帯における遊離脂肪酸濃度が高値を示した。近年、睡眠不足と2型糖尿病発症リスクの関連が指摘されており、今回の結果は睡眠不足によるインスリン感受性の低下の可能性を示唆している。ただし、今回の検討では糖負荷試験をおこなっておらず、断眠のインスリン感受性への影響については今後の更なる検討が必要である。断眠の身体への様々な影響を明らかにするために、被験者数を増加させ、糖負荷試験や心拍出量の測定を含めた包括的かつ多角的な検討をしていくことが重要であると考えている。