表題番号:2011B-281 日付:2012/04/04
研究課題身体運動、睡眠の質、前頭葉機能の相互関係に関する総合的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 内田 直
研究成果概要
睡眠が脳機能に、与える影響についてこの一年間では3つの研究を行った。

1.職域において、運動介入を行い、睡眠の質、気分の変化について調べた。
現在、11ヶ月が経過しており、まもなくデータ収集が終了する。解析は、部分的にしか行なっていないが、運動介入により、身体的な変化だけでなく睡眠、気分が改善するケースが見られた。また、研究の途中で、被験者の中に睡眠時無呼吸症候群のケースが見つかるなどの付随的な成果もあった。これらの成果は、簡易型の睡眠計測装置を用いて、睡眠の客観的データを測定したために可能になったものであり、このような睡眠測定の健康科学における重要性についても成果が得られた。一方で、干渉因子も多く、フィールド研究の困難さを感じさせる面もあった。全体の解析が終了すれば、出版を行う予定である。

2.健常若年成人を対象として、一過性の有酸素運動を行わせ、その後の睡眠の変化を調べた。
有酸素運動は、60%VO2maxの自転車エルゴメーター40分間である。これを8時に行わせ、その後睡眠を取らせた。睡眠構造に変化はなかったが、自律神経系や、糖代謝に対して変化が見られた。特に糖代謝に対する影響については、今後、糖尿病などの患者に対して、習慣的に運動介入を行う場合に、夜間の運動が睡眠中の糖代謝に特異的な影響をあたえるのかどうかという視点で興味がもたれる。運動をどの時間帯に行うのが良いのかについては、様々な研究が行われているが、例えば生活習慣病予防の目的の場合はどうかという視点で、多面的に詳細な研究は未だ行われていない。このような視点で更に研究を進めていきたい。現在、データを解析し、論文を執筆中である。

3.運動学習と睡眠についての研究
手続き記憶課題を行ったたあと、昼寝をすると、昼寝をしなかった場合に比べて、有意に技術の向上が認められるということが知られているが、これがよりスポーツに関連ある課題で行った場合に同様の効果が認められるかどうかについての実験を行った。課題として、ジャグリングのスリーボールカスケードを行った。その結果、スポーツに関連ある課題でも睡眠による効果が認められた。