表題番号:2011B-257 日付:2012/04/18
研究課題医療現場における死生体験が死生観に与える影響についての研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 小野 充一
研究成果概要
本研究は以下の3部で構成する予定で、1)【死生観の定量的測定研究】は、「死生体験が定着するための態度尺度」を開発し、日本人が一般に共有している死生体験と死生観について統計的社会調査を行って明らかにする。2)【治癒困難な傷病を抱える患者と家族がもつ死生観の定性的研究】とデータベース構築は、「死」や「死」に勝るつらさを体験する臨床現場において「患者と家族の死生体験と死生観」に関する記述的調査(半構造化面接)を行い、「患者と家族の語りのデータベース」を構築・公開する。3)【死生体験が死生観として定着するプロセスに関する定性的研究】は、医療専門職に対して「治癒困難な傷病を抱える患者と家族の語り」を提示して、前後に「死生体験が定着するための態度尺度」を用いた質問紙調査を行いその変化を測定するとともに、半構造化面接を行い、患者と家族の語りが個人の死生観に与える影響を明らかにする介入研究である。今年度は、1)【死生観の定量的測定研究】(早稲田大学臨床死生学研究所グループ担当)については、日本人が持つ死生観の多次元的構造を測定するために、「死生体験が定着するための態度尺度」をあらたに開発し、既存の死生観尺度や死に対する態度尺度と組み合わせて、無作為抽出の統計的調査社会調査を行うためのワーディングを行った。次年度は、パイロットスタディ用の調査項目の開発を行う。2)医療現場における死生に関する肯定的コミュニケーションの構成要因についての臨床現場における探索的研究については、【治癒困難な傷病を抱える患者と家族がもつ死生観の定性的研究】とデータベース構築に向けて準備作業を行った。まず、治癒困難な傷病の臨床現場として、がん緩和ケア、認知症ケア、周産期医療、救急医療、小児がん、神経難病の各領域を設定し、各々の現場で研究参加に同意した患者と家族に対して「患者と家族の死生体験と死生観」についての半構造化面接を行うために、各臨床現場を構築する共通基盤としてのヒューマンケア概念の検討を行った。その検討に向けて学外有識者5名と研究者4名による共同検討を2011年7月より隔月で4回開催した。その結果として、ヒューマンケア2.0概念が構築され、これを基盤として死生体験の聞き取り調査の質問項目についての検討を開始した。これを受けて、面接調査施行体制の確立に向けて、各領域に共通した面接施行ガイドおよび面接トレーニングガイドを策定する予定である。今年度は、調査者として人間科学部助手1名に対して、DIPEX-JAPANの協力を得て本研究に必要な調査者トレーニングを行ない、OJTも終了した。引き続いて、基礎的な質的インタビュー調査の基礎的知識を習得したものを約20名養成する予定である。さらに、死生に関するコミュニケーションの代表的な臨床現場として緩和ケアおよび在宅ケアを選定して、我が国と諸外国のケアの質評価システムの違いを調査する目的で、オーストラリアの緩和ケア緩和ケア協会とビクトリア州緩和ケア協会、モナシュ大学緩和ケアチームの3か所にて実態調査を行った。この報告は、平成24年日本ホスピス緩和ケア協会総会にて発表予定である。