表題番号:2011B-253 日付:2012/04/08
研究課題デザイン実験アプローチによる学校を基盤とした持続型現職教育システムの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 浅田 匡
(連携研究者) 大学院人間科学研究科 大学院生(修士課程2年) 今村 こころ
研究成果概要
 学校と大学との連携による現職教育を支援するシステム構築のために、埼玉県内小学校2校との協働を行った。具体的な取り組みとして、1)学生ボランティアによる教育活動支援、2)デジタル教科書の活用による授業の開発、3)校内研修での情報提供、4)国際交流活動の支援、5)ゼミの開放、などがあげられる。これらは、教育研究あるいは教育実践研究において問題とされてきた、理論と実践との乖離という課題に関して、イギリスにおいてこれからの教師の資質能力として提唱されたキャパシティ概念をいかに伸長するか、ということへの1つの試みである。
 その結果、デジタル教科書の活用やボランティアの活用など、新たな教育実践への取り組みにおいて、若手及び経験教師間の協働や学校を超えての教師の協働が生起した。それ故、新たな教育実践に向けて大学が協働することが、教師の学びや協働にポジティブな影響をもたらすことが示された。
 しかしながら同時に、学校と大学とのパートナーシップの確立は容易ではないことも明らかになった。とりわけ学生と各教師との関係性のあり方は、この協働の成果を左右することが示された。また、校長をはじめとする学校管理職が学生ボランティアをどのように意味づけるか、ということも重要な要因であることが示唆された。すなわち、この協働によって学生を教育するという視点に立つ場合と、それぞれの教育実践をより改善するということを第一に考える立場に立つ場合とでは、学生に求められる活動が異なり、学生による授業等の支援が十分には行われないことが生じた。さらに、教師にとってゼミ参加のハードルは高いことが示された。教師の多忙化の問題はあるにしろ、むしろ研究へのアレルギーともいえる感情的な要因が障害になっていると思われた。
 これらの問題に関して、学生ボランティアとして、ボランティア活動をより有用に行えるように、アクション・リサーチの考え方に基づき実践を積み重ね、学生が成長するとともに、教師との関係が成立していくことが示された。
 これらを踏まえて、今後進めていく予定であるICTを活用した支援システム開発の開発コンセプトとして、関係性と情緒的要因をどのように組み入れるかが課題であることが示された。