表題番号:2011B-244 日付:2012/04/03
研究課題地域再生を支援する民間コミュニティ事業住宅の社会実験研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 教授 早田 宰
研究成果概要
 老朽化、条件不利等により空家化した民間賃貸住宅を、「キーワーカー住宅」(地域再生を支援する民間コミュニティ事業住宅)として再生、活用する社会実験研究としておこなった。キーワーカー住宅はイギリスの住宅政策で発達した仕組みで、公的な専門サービス職として活動する者(医療・福祉・警察・教育・環境・都市計画等)が地域再生を推進すべき停滞地域内に居住する場合に地域再生ファンド等から家賃補助し、居住者の職住近接による移動時間の軽減、居住者の家計負担の軽減、建物のよりよい管理への参加、地域への専門サービスの提供、コミュニティ参加、地域再生支援等を複合的に達成するアクティブ居住の仕組みである。日本においてはまだ事例がほとんど存在しないため、その社会実験研究をおこなった。
建物は、埼玉県川口市西川口1丁目の都市再生プロジェクトが行政により推進されている停滞地域のエリアに立地する鉄骨3階建の全15室の賃貸住宅を選定した。既存の入居者が居住しているが、うち4室が老朽化、隣接工場の騒音等により空家になっている。それらを所有者、管理会社と協議の上、コミュニティ事業住宅とし、3室をキーワーカー住宅、1室を共有スペースとした。共有スペースはコミュニティ事業住宅の居住者が使用する他、サブリースによって一般も短期使用可とした。
 実験の結果、1室に運送業従事者がキーワーカーとして入居し、地域内物流を通じて地域再生に大きな効果があった。2室は騒音のため空室のままとなっている。共有スペースは、地域再生を支援する活動に短期に様々な形で使用された(地域におけるイベント、会議、短期事務所使用等)。またキーワーカーの自助努力により緑化も一部行われた。ただし自建物以外の要因、とくに周辺の住環境の影響を受けるため、その検討が重要であることがわかった。以上により、「キーワーカー住宅」が日本の停滞地域で社会事業住宅として有効な手法となりえることがわかった。今後そのソーシャルビジネスモデルとして整備することが期待される。