表題番号:2011B-242 日付:2012/02/27
研究課題地球環境問題への非線形均衡動学の応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 教授 赤尾 健一
研究成果概要
地球環境問題への非線形均衡動学の応用として、次の3つの研究を行った。(1)非凸生産関数最適成長モデルにおけるクリティカル・キャピタル・ストック(CCS)の特徴づけ。(2)ダイナミックゲームと最適成長モデルに関するラショナライゼーション。(3)市民の自己監視を利用した環境政策。

(1)は京大経済研究所西村和雄教授、神戸大経済経営研究所上東貴志教授との共同研究成果として、CCSが割引率の連続かつ狭義単調増加関数であること、CCSが存在する上限の割引率において、それは内点定常解と一致するヘテロ・クリニック・ポイントとなること、限界効用の弾力性が一定の効用関数のケースで、この上限の割引率は、同弾力性を十分に大きくすることで生産関数の変曲点の傾きに好きなだけ近づけることができこと、一方、同弾力性を十分に小さくすることで平均生産性の最大値(<変曲点の傾き)に好きなだけ近づけることができることを明らかにした。

(2)はConnell大Tapan Mitra教授、Vienna大Gerhard Sorger教授との共同研究成果として、生産技術を不変として、いかなる最適成長モデルの最適経路もダイナミックゲームの均衡経路と解釈できること、逆にあるダイナミックゲームの均衡経路のあるクラスは最適成長モデルの最適経路と一致させることができることを示した。特に興味深い結果としてLevhari-MirmanのGreat Fish Warモデルでは、その生産関数を共通とし効用関数のクラスを消費のみに反応するものとするとき、ダイナミックゲームの線形戦略は、まったく同じ瞬間的効用関数とより大きな割引率をもつ最適成長モデルの最適方策関数と一致する。つまり、戦略的依存関係は割引率によって調整される。

(3)はHoseo大のGeum Soo Kim教授との共同研究成果として、ゴミの不法投棄のような政府のみでは十分な環境政策を実行できないか、実行するには多大なコストが発生する状況で、人々の自己監視によって効果的な環境規制が可能となるか、またそうした自己監視が機能するための社会共通資本の果たす役割を進化ゲームの枠組みで分析した。社会を構成する3つのタイプの主体、すなわちルールを守る者、ルールを破る者、そしてルールを守るだけでなくルールを破る者を告発する者の人口変化が分析の対象である。ルールを破る者が絶滅するための条件を政府の政策および社会共通資本のダイナミクスとの関係において明らかにした。