表題番号:2011B-238 日付:2013/05/05
研究課題LIBSを利用したナノ微粒子のマイクロ微粒子に対する相互作用に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助教 池沢 聡
研究成果概要
 本研究では、レーザー誘起ブレークダウン分光法(LIBS)を用いた微粒子計測に関する基礎研究として、ナノサイズの金属微粒子に対する組成分析と、定量評価、及びアルゴン雰囲気ガスの影響に関して時間プロファイルを詳しく分析し、評価を行った。近年、ナノ金属微粒子を用いた研究が活発に行われている。例えば金属ナノペーストをインクとして使用し、柔軟なフィルム上にプリント配線が可能である他、銀ナノ粒子の粒径の違いによる発色の違いを利用した二次元カラーバーコードの作製等、利用用途は拡大している。しかしながら、ナノサイズの微粒子に対して、健康への影響評価や、環境調査などはまだ十分に行われていないのが現状である。これは、ナノ微粒子に対する測定には高度な技術を要するからである。そこで本研究ではLIBSシステムを用いて、微粒子のリアルタイムモニタリングが行えるか否かに関する評価を行った。本研究における計測では、まず金属ナノ微粒子を集光レーザーに命中させるためのサンプリングシステムを新たに開発した。これまでの研究では、微小液滴をインクジェットシステムによって飛ばしレーザーに命中させる方法が取られてきた。この手法はレーザーの集光領域に完全に被測定物を導入できるため、絶対定量の分析が可能である。しかしながらノズルの価格は約80万円と高価な上、レーザープラズマの衝撃によるノズル破壊の危険性やノズルの目詰まりなどの点で実用上の問題点も多い。そこで本研究ではディスペンサー用のルビー材料のノズル(内径30μm)を利用し、これを市販のシリンジ先端に取り付けるという方法を考案した。これによりノズルのコストを5万円以内に抑えることが可能となった。現時点では加圧により液体材料が連続放出されるため、濃度に対する定量同定であるため、准定量(semi-quantitative)分析となっている。将来的には吐出制御を行い独自にLIBS用の液滴生成システム用のアクチュエータを開発したい。実験システムではノズル周囲に任意のガス雰囲気を生成できるようなアタッチメントも開発した。実験では銅ナノ粒子(粒径13~25nm,平均粒径20nm,溶剤:テトラデカン)及び、銀ナノ粒子(粒径2~7nm, 平均粒径5nm, 溶剤:テトラデカン)を使用した。LIBSによる実験の結果、銅ナノ粒子に関しては、波長λ=324.754nm, λ=327.396nmに、銀ナノ粒子に関しては波長λ=328.068nm, λ=338.289nmにLIBS計測で有効なスペクトル線を見出した。更にこのスペクトルピークと測定インク濃度の対応から検量線を作成し、准定量分析を可能にした。本実験では食塩や水などの絶縁物以外の対象物として金属が選ばれたが、被測定対象が金属の場合レーザーにより金属表面から気化していくため、通常は定量計測を行うには照射条件をそろえるために定義づけが必要である。本LIBSシステムではレーザーの集光位置においてスポットサイズ(53μm)の領域内で金属微粒子が一定数収まりプラズマ化されるため、LIBSのための定量分析を実現するシステムとして有用である。本研究によりクリーンルームで捕集された、モーターのブラシから発生したと想定される銅マイクロ微粒子と、これに付着するナノ炭素粒子の因果性を特定可能なLIBS分析を実現するための目標の第一ステップを達成した。