表題番号:2011B-212 日付:2012/04/09
研究課題非母語音声生成・知覚・習得の計算科学
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 匂坂 芳典
(連携研究者) 教育・総合科学学術院 教授 中野 美知子
(連携研究者) 国際教養学術院 教授 近藤 眞理子
研究成果概要
本研究では、母語によって異なる第二言語音声の生成・知覚現象を音声科学として理解し、音声言語教育に資するため、第二言語学習者に見られる音声生成の時間制御・知覚特性分析を目的とする。まず、学習者の時間長制御傾向を把握するため、日本人学習者英語音声区分の時間長を解析した。英語教師が学習者英語音声に付与した主観評価得点と、学習者音声と英語母語話者音声に見られる各音声区分の持続時間長の相違に対しての相関分析を行った。この結果、文中の強音節数が1、2、3と増加するにつれて、相関値は、各々0.34、0.49、0.68と上昇することが判明した。これから、英語音声の強勢と弱勢に基づくストレスタイミングの実現が、日本人学習者ではうまくなされておらず、複数のストレス(強音節)を有する音声サンプルほど明確な差異が生じていることが明らかとなり、客観的な測定量で能力差を定量的に評価する上での測定対象に対する配慮が必要であることが判明した。
 また、言語による時間長制御の違いが、音素カテゴリの生成・知覚に与える影響を解析するため、促音と非促音、長母音と短母音といった、日本語学習者にとって学習が難しい特殊拍について分析した。韓国人日本語学習者に対し、特殊拍の知覚学習を種々の条件で実験し、学習者毎に学習前後の能力を比較した結果、発話テンポが異なる音声を用いた学習の優位性が示された。また、知覚判断特性の分析により、促音の誤答の傾向と音の大きさを表す感覚尺度であるラウドネスとの相関があることが明らかとなった。この結果により単に音声の時間長比較だけでなく、リズムやタイミングの知覚現象としての詳細解明の必要性が明らかとなった。
 さらに、本研究が対象とする母語による違いの分析を可能とするため、第二言語作成と利用に関する共同研究コンソーシアムAESOP(Asian English Speech cOrpus Project)に参加するアジア圏研究者との連携を図り、台湾(新竹市)で国際ワークショップを開催すると共に、日本、中国、ミャンマーを母語とする英語音声コーパスの作成を進めた。また、ネパール、インドネシアといった、新たなAESOP参加国の研究者達と共通音声コーパス作成について準備を開始した。