表題番号:2011B-210 日付:2012/04/05
研究課題映像コミュニケーション基盤としてのパーソナライズドIPTV機能に関する基礎的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 亀山 渉
研究成果概要
NGN(Next Generation Network)の実用化に伴い、NGN上の主要アプリケーションとして、従来のテレビの進化形態であるIPTVが注目されている。IPTVはIPネットワーク上でのオープンなサービスであるため、ネットワークに繋がる各視聴者は、IPTV基盤を用いた自由な情報発信や情報交換が技術的には可能である。このことから、IPTVは、従来のマスメディアとしての放送サービス、及び、パーソナライズドメディアとしてのVoD(Video On Demand)サービスを享受できるメディアとしてだけではなく、近い将来に、映像コミュニケーションメディアとして発展することが予想される。具体的には、同じ興味を持っている視聴者間で映像コンテンツを共有して視聴し、そのことによって視聴者間で感想や感情の共有が可能となる。加えて、視聴者からの映像配信も可能であるため、視聴者自身がコンテンツプロバイダあるいはサービスプロバイダとなることも可能となる。このことによって、IPTV視聴者は、世界中の放送局等のビジネスサービスプロバイダだけからではなく、一般視聴者と高品質な情報交換が可能になり、豊かな人間間のコミュニケーションを実現できる可能性がある。このようなサービスをIPTV上に実現するためには、SNS(Social Networking Service)に見られるような情報共有機能、視聴者が持っているコンテンツを配信・共有する著作権を考慮したコンテンツ配信機能及びコンテンツ管理機能、視聴者の嗜好の発見、嗜好の分析、嗜好情報の更新機能が必要であり、それに基づいた映像コンテンツや番組編成のパーソナライズ化が必須となる。以上から、本研究では、映像コミュニケーション基盤の観点からIPTVに着目し、豊かな映像コミュニケーションを実現するために必須の機能について、その具体化に関する基礎的な研究を行った。
本研究では、特に、視聴者の嗜好の発見と嗜好の分析に焦点を当て、生体信号を利用した、非拘束で自然なユーザ嗜好情報の効率的な取得手法について研究を行った。具体的には、映像コンテンツ視聴中の視聴者の瞳孔径情報と、背景脳波観測による視聴者の情動情報を利用して、映像コンテンツのどの部分に視聴者がどのような興味を持ったのかについて分析する手法について研究した。実験の結果、単位時間における視聴者の平均瞳孔径及び瞳孔径変化の周波数成分と、背景脳波の特定の周波数成分電力間に強い相関関係があることが分った。即ち、これらの情報を利用することにより、視聴者の映像コンテンツに対する興味内容を具体的に分析できる可能性が高いことが示唆された。
今後は、本手法を更に推し進め、視聴者の具体的な嗜好の分析技術を確立すると共に、映像コンテンツの有用性をユーザ毎に多角的に評価・分析し、時々刻々と変化するユーザ要求を満たす映像コンテンツ推薦方式の研究につなげていく予定である。