表題番号:2011B-180 日付:2012/03/13
研究課題面不斉ピリジンの高機能触媒化と不斉反応への応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 鹿又 宣弘
研究成果概要
我々はこれまでに様々なピリジノファン骨格を有するピリジニウム塩を合成し,塩基存在下において電子不足アルケンと反応させることで,高エナンチオ選択的にtrans-シクロプロパンが得られることを報告している.さらに,面不斉ピリジンと銅カルベン錯体より系中でピリジニウムイリドを形成し,それを活性種として用いた触媒的不斉シクロプロパン化反応についても達成した.そこで本研究では面不斉ピリジンを有機触媒とする不斉反応系の構築を目的とし,固体塩基存在下,面不斉ピリジンのアルキル化と脱プロトン化によりピリジニウムイリドを系中で発生させ,電子不足アルケンであるベンザロマロノニトリルを基質として触媒的不斉シクロプロパン化反応を検討した.
炭酸カリウム存在下,ジクロロエタン溶媒中65℃で反応を行った結果,高エナンチオ選択的にシクロプロパン化反応が進行し,trans-シクロプロパン体が97%収率,91% eeで得られた.また,反応温度を下げて反応を行ったジクロロメタン還流条件においては81%収率,94% eeでtrans-シクロプロパンが得られ,有機触媒である面不斉ピリジノファンの光学純度の低下もほとんど見られなかった.さらに,本触媒反応のエナンチオ選択性における基質一般性について検討した.様々なアリールジシアノアルケンを用いてシクロプロパン化反応を行った結果,いずれの基質においても高エナンチオ選択的に反応が進行し,良好な収率でtrans-シクロプロパンが得られた.特にo-MeOC6H4とo-Tolylを有する基質を用いた際に立体選択性が高く,共に最高96% eeで望みのtrans-シクロプロパン誘導体を与えることを見出した.以上の結果より,以前報告した銅カルベン錯体を用いた触媒的不斉シクロプロパン化反応ではtrans-シクロプロパンの不斉収率が最大で93% ee であったことから,今回新たに構築した有機触媒系による本触媒反応が,極めて有用であることが示された.