表題番号:2011B-167 日付:2012/04/04
研究課題非発散光学の物理に基づく革新的波面コード化技術の創成
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 小松 進一
研究成果概要
 波面コード化 (WFC) 法による被写界深度拡大(EDOF)を非発散光学現象の枠組みの中で捉え直すとともに光学設計ソフトを活用し,3次位相板(CPM),最適化位相板(FPM),円対称位相板(QPM,CSPM)およびランダム位相板がもたらすEDOF特性の検討を通して,波面コード化の物理のさらなる解明と革新的波面コード化技術の創成に向けて,以下の課題に取り組んだ。
 1.波面コード化の物理の解明
 2.デジタル復元フィルター最適化によるEDOF性能の向上
 3.ゼルニケ多項式による円対称位相板の最適化
 4.WFC顕微鏡光学系の最適設計
 その結果,
 1.CPMで瞳変調した光学系で得られるアナログ中間像の点像分布関数(PSF)と光学伝達関数(OTF)が,デフォーカスパラメータΨの正負に関してほぼ対称な特性を示すことをフーリエ光学の解析によって導いた。
 2.CPM‐WFCシステムにおいて,焦点はずれ位置のPSFを用いて作成したデコンボリューションフィルターがもたらすW型のEDOF特性とそれによるEDOF効果拡大の理由が,前項1の結果によって説明できることを示した。すなわち,上記PSFの焦点はずれ量φを大きくすると,正負の±φにおいてフィルター後の復元像の誤差が零となりEDOF特性の幅は拡大する。その一方,合焦位置での復元像はφとともに増加する誤差を含むようになり,その大きさが許容量に達するところが,EDOF効果拡大の限界となる。
 3.ゼルニケ多項式で表される円対称位相板を,OTF高周波成分を減少させない条件下で最適化した。従来から知られていた半径の2次と4次の項で表される位相板(QPM)とは異なり,回折限界までOTFに零点がない位相板形状(CSPM)が得られた。被写界深度は通常光学系の2.7倍にとどまったが,最終画像の画質は良好でrms誤差も小さかった。
 4.CPM‐WFC顕微鏡光学系において,CPM挿入位置によるEDOF効果の変化を,光学設計ソフトを用いて評価した。射出瞳近傍挿入時のEDOF効果は,入射瞳挿入時の2.2倍に拡大され,挿入位置依存性も小さいことが分かった。