表題番号:2011B-163 日付:2012/03/05
研究課題ラジカルポリマーを用いた電荷分離・輸送ソフト界面の構造制御と光電変換系の構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 小柳津 研一
研究成果概要
ニトロキシド、ニトロニルニトロキシド、ガルビノキシル、フェルダジル、トリアリールアミニウム、2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシルラジカルなどの有機安定ラジカル種を繰返し構造単位当たりにペンダント置換基として有する非共役ポリマーであるラジカルポリマーを、電荷輸送および貯蔵材料に利用し、色素と組合せた分子レベルの光電荷分離界面を構築することによって、効率高い光電変換系の構築に取り組んだ。ラジカルポリマー膜における電子移動と、それに伴うイオン輸送現象の全容解明により、有機二次電池の具体化に不可欠な革新的電極活物質を創出するとともに、色素を組み込んだ光電荷分離・輸送系へ拡張し、光電変換能に基づく新型有機太陽電池を試作、動作実証することにより、その効果を明らかにした。特に、これらの支配因子と考えられる膜/電解液界面における物質移動を、ラジカルポリマーゲル表面への規則的・階層的構造の導入を手段として極限まで効率化する切り口から、光電荷分離に関わるソフト界面の化学として一般性高い知見を確立した。研究期間内に、安定ラジカル種の電気化学・磁気的性質、ラジカルポリマーでの蓄電に関わる諸現象の解明、ラジカルポリマーゲル/電解質界面に配置させた色素の増感反応の実証に焦点を絞り、新規ポリマー合成を中心とした具体的成果を集積した。この結果、インドリン系有機色素、ルテニウム錯体色素を単一分子レベルで制御しながらポリマー界面に配置させた電荷分離界面で、吸収波長と吸光度、内部変換効率、太陽電池セルでの開放電圧、短絡電流密度、フィルファクターとの相関を詳細に解明し、色素の励起電子受容とメディエータ分子による連続的再生が全体の光電変換効率を支配していることを明らかにすると共に、密集したラジカル分子が光電荷分離の頻度因子を増加させ、効率高い光電変換系を可能とすることを明らかにした。メディエータ分子およびラジカルポリマーのエネルギー準位は化学構造により自在設計可能であり、従来の湿式太陽電池と比べて一層の効率向上を可能とする有機分子ならではの自由度を有することを、これら全有機太陽電池の優位性の一つとして確立した。