表題番号:2011B-147 日付:2013/05/14
研究課題医療画像からの力学情報の直接抽出と利用法の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 宮下 朋之
研究成果概要
画面描写等に必要な計算処理を行う半導体集積回路であるGraphics Processing Unit(GPU)の計算能力は近年飛躍的に向上しており,今日では浮動小数点の計算速度ではCPUを大きく上回っている.このGPUの計算能力を画面描写以外の用途で用いることが試みられており,GPGPU(General Purpose computing on GPU)と呼ばれている.GPUは非常に多くのストリームプロセッサを持ち、並列処理でとても高い計算能力を持つ。このことから、動画のエンコーディングや音声処理、フーリエ変換などの並列度の高い計算においてGPGPUを適用することで計算速度を大きく向上させることができる。本研究では、CTやMRIなどの撮像装置より抽出した画像を格子状のセルとセル毎に定められた計算則からなる離散的計算モデルとして、直接に利用する計算法を構築した。すなわち、セルラ・オートマトン法(以下C.A.法)を利用した弾性体の解析手法を提案し、その演算の並列性に注目し、GPUによる高速演算による処理を可能とした。特に、本研究では、C.A.法を用いた粘弾性体のクリープ解析手法を提案し、更にCUDAに適用することで高速化を目指す。粘弾性の代表的なモデルとしてフォークトモデル(Voigt Model)とマクスウェルモデル(Maxwell Model)の2つが挙げられる。本研究ではクリープ解析挙動を表現することに適しているフォークトモデルとして定式化した。
 C.A.法で使用する状態遷移式は解析対象を細分化した微小物体の運動を考えることで立式し、離散化することで導出することができ、解析対象の内部、表面などの境界条件によって遷移式を用意する必要がある。そのため、解析方法は基本的には弾性体の解析と同じであるが、粘性項を含むことにより変位の時刻暦応答依存を解き定式化した。
C言語とCUDAにて作成したプログラムを用いて提案手法GPGPUによる解析結果、時間について考察した。GPGPUを適用することで、GPUのマルチプロセッサを生かした並列度の高い演算をすることができるようになる。立方体を模擬したセルに対して初期変位を与え、クリープ挙動を見る解析を行い、その際の解析時間と解析精度を比較した。C言語とCUDA双方の解析において、同様の結果を得ることが出来た。また、解析速度は、セル数が多く計算量が多くなるほどCUDAが高速という結果を得ることができ、提案手法の有効性を確認した。