表題番号:2011B-145 日付:2012/03/08
研究課題地震など危機状態用の発電所回転機械・エンジンの即応形滑り軸受のトライボロジー開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 林 洋次
研究成果概要
 地震や津波や台風などでは、ライフライン確保のための発電設備の回転機械や給排水ポンプまた避難や救援のための輸送機械が支障なく運転されることが極めて重要である。それゆえに、水力・火力・原子力発電所で使用される水車・タービン・ポンプなどの回転機械軸受、また自動車や船舶などで使用されるエンジン軸受に対し、運転開始からの過渡現象に関するトライボロジー研究に行い、危機状態に即応する滑り軸受の開発を行うが本研究の最終目的である。
 そこで、ピストンピンボス軸受・コンロッド小端部軸受・コンロッド大端部軸受・主軸受が互いに連成し、かつ燃焼ガス圧が衝撃的に作用するエンジン軸受は回転機械用の滑り軸受の取扱いを含んでいることから、本研究では取扱いが複雑なエンジン軸受を取り上げた。
 実験的研究では、軸受隙間内の軸心軌跡は急激に変動して潤滑油膜の形成領域と破断領域は刻々と変化するので、透明なアクリル樹脂で軸受を製作し、電磁加振動機によって燃焼ガス圧を模擬的に負荷させる滑り軸受試験機を開発した。高速度ビデオカメラ2台を用いて油膜破断領域の形状を撮影し、かつ渦電流式変位センサを用いて軸受隙間内の回転軸の軸心軌跡ならびにひずみゲージ式圧力センサによって軸受隙間内の油膜圧力変動を計測した。
 理論的研究では、エンジン軸受の軸受隙間内の支配方程式の連成効果を考慮した解析手法を考案すると同時に、各軸受に特化した簡略手法を提示した。前述の実験的研究成果の油膜状況を考慮した全軸受連成理論解析は日米スパコン貿易摩擦当時のスーパコンピュータをはるかに凌ぐパソコンを用いても約1週間の演算時間を要することから、これらの理論解析の連立微分方程式の時間微分に関する演算時間短縮の数値解析手法として、時間刻み内では線形補間を使用するが反復計算によって修正する簡易数値解析法を考案し、可変刻み幅ルンゲクッタ法などと比較して、本理論解析手法の効果を検証した。