表題番号:2011B-143 日付:2012/04/04
研究課題ヒト歩行戦略に基づく軟弱路面での2足歩行安定化技術の基盤構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 高西 淳夫
研究成果概要
本研究課題では,軟弱路面でのヒトの歩行運動を計測・解析し,その解析結果から得られるモデルを2足ヒューマノイド・ロボットへ実装することを通して,その妥当性を検証するとともに,軟弱路面での2足歩行安定化技術の基盤構築を目指す.
本年度は軟弱路面での人体計測結果をもとにHead Stabilizationをモデル化し,そのモデルを2足ヒューマノイド・ロボットに実装し評価した.

(1)軟弱路面でのヒト歩行運動の計測・解析
剛体路面と軟弱路面でのヒト歩行を比較することで,次の3つの知見を得た.
(i) 足先の運びに注目したところ,歩隔や歩幅には有意な差は認められなかったが,軟弱路面では足上げ高さが増加する傾向があった.軟弱路面では立脚が路面に沈み込み,路面と接触する危険性が高まるため,これを回避しているものと考えられる.
(ii) 重心の動きに注目したところ,鉛直方向の振幅は軟弱路面で増加する傾向があったが,左右方向の揺動については有意差が見られなかった.ヒトは軟弱路面では重心の位置を安定化するように歩行を実現しているものと考えられる.
(iii) 軟弱路面においても剛体路面と同様に頭部の動きが小さく,Head Stabilizationが成り立つことが示唆された.

(2)Head Stablizationのモデル化と2足ヒューマノイド・ロボットへの実装
軟弱路面においても頭部が安定化されていたため,逆運動学モデルを利用しHead Stabilizationをモデル化した.
実際に2足ヒューマノイド・ロボットに実装して評価したところ,提案手法を用いることでロボットの歩行中の視覚情報を安定化することができ,その有効性が確認できた.

(3)ロボット頭部へのIMUの実装
現状のHead Stabilizationモデルでは,ロボットの各関節に配置されているエンコーダの角度から算出される頭部の角度情報を利用している.しかし,ヒトは頭部にある前庭器官の情報を利用しているため,ロボットにも同様の情報が取得可能なセンサの搭載が望まれる.そこで今年度は,ロボット頭部に改良を加え,Inertial Measurement Unit(IMU)を実装した.

以上で得られた基盤技術を,次年度以降のシステム開発に還元することを計画している.