表題番号:2011B-142 日付:2013/04/12
研究課題複数の人間と共に移動可能なヒューマノイドロボットの安全モビリティに関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 菅野 重樹
研究成果概要
人間共存ロボットの導入における課題の一つとして,人との接触が避け難い狭小空間でも安全を確保した上で効率的に目的地へ到達する安全安心移動技術がある.これまで安全性の観点から接触に対する追従制御は実現されているが,それに伴う移動の変化による効率については考慮されておらず,トレードオフ関係を形成する人・ロボット双方の移動効率を満足する技術が必要である.そこで本研究では,接触力に基づく軌道予測を行い,双方の移動効率を満足しつつ安全性と両立させる接触運動制御手法の開発を目的とした.
上述の制御則構築のため,本研究ではまず移動効率を接触前後の移動速度ベクトルの変化と定義した.接触移動中は両者の目標移動効率を実現しうる目標接触力と全身の運動目標を決定するため,腕部による接触力は両者を結ぶ線分方向,移動部による加速度は接触力と直交する方向に限定し,人が接触力に倣うことを前提に相対座標系を用いて軌道予測を行う.実際に算出した目標接触力を維持するように腕部で力制御を行い,移動部は相対的な軌道目標に追従させる.しかし,人が非常に大きな接触力を与える場合においては移動部が予想と異なる軌道を描くため,ロボットの移動効率は著しく低下する.そこで目標接触力を増大させ移動効率を満たすよう軌道を修正する.人からの接触力が小さい場合には同様に人の移動効率が低下してしまうため目標接触力を減少させる.なお,接触力が安全性の目標である痛覚耐性値を超える場合には目標移動効率を修正した上で再び予測を行う.これにより,接触中の力変化に応じて適応的に目標接触力と軌道が変化し,結果として安全性を確保しつつ,互いの移動効率を満たすことができる.
有効性検証のため二次元空間でのシミュレーション実験,接触移動用プロトタイプロボットとマネキンを用いた評価実験を行った.両実験において力変化に安全に対応しつつ目標移動効率が高められることを確認した.