表題番号:2011B-125 日付:2012/05/08
研究課題建築家アドルフ・ロース未邦訳論稿の全邦訳 並びにウィーン世紀末期関連資料の蓄積
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 中谷 礼仁
研究成果概要
アドルフ・ロース(Adolf Loos, 1870-1933)が残した論考の全邦訳(全3巻)を本研究の第一義とする。本助成交付期間である2011年度は、著作第一集にあたる『Ins Leere Gesprochen 1897-1900』(Adolf Loos. 1921.)の原語(ドイツ語)からの全邦訳完了とその公開を目標とし、研究を進めた。また、この翻訳活動に伴い、本書所収論考の執筆背景研究と、ロース関連資料の蓄積を行った。

①著作第一集の全邦訳および公開
・翻訳作業
ロースによる論考のテーマは多岐に渡り、建築史、ウィーン史、ドイツ文学など多角的な視点が必要となるため、2010年度までに翻訳検討組織を結成した。助成期間である2011年度は、月 2 回の翻訳検討会議を開催し、訳文の読み合わせおよび訳注箇所の検討をそれぞれの専門的視点から行った。また、2011年8月8~10日には、それまで翻訳した全訳文の再確認、公開に向けての工程確認を目的に二泊三日の合宿を行った。本助成の一部はこれら翻訳検討会議に関する運営費(翻訳者への謝金、印刷費、用紙代、録音テープなどの雑費)に充てた。
・訳注作成
ロース論稿の読解に際し、その訳文に対して実証的な裏付けが必要不可欠となった。ロースの論稿には職人の名や地名といった数多くの固有名詞が登場する。しかしながら、現代においては詳細が不明な部分も多く、その批評対象を明瞭にし、論考の真意を正しく捉えるため、当時の資料ならびに文献の入手を行い、全260項目の訳注作成を行った。
・公開
2012年4月、『アドルフ・ロース著作集(1) 虚空へ向けて』(アドルフ・ロース著、加藤淳訳、鈴木了二+中谷礼仁監修、編集出版組織体アセテート)として刊行した。研究成概要の報告についての書類が届いた2月の時点で、すでに印刷の段階にさしかかっており、本助成を受けた旨および課題番号に関する記載は、シールの貼付等により明記することとした。
・研究
これら未邦訳論稿の読解に伴う研究を、学生の修士論文・卒業論文として三題発表した。
②展示会の復元(執筆背景に関する研究)