表題番号:2011B-123 日付:2012/04/09
研究課題医療福祉施設における感染症リスク低減に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 田邉 新一
(連携研究者) 理工学研究所 次席研究員(客員講師) 堤仁美
研究成果概要
10月に科研費に追加採用されたため、科研費と連携した成果となっている。

以下の項目に関して研究を行った。
1)空気感染に関する知見の整理:インフルエンザの空気感染の可能性も考慮し、飛沫感染として扱われてきた近距離(1.5m以下)での空気感染のメカニズムを中心として国内外の文献調査を行った。また、感染を引き起こすウイルス・菌を含む飛沫および飛沫核は、主に感染者の咳およびくしゃみにより飛散されるため、PIV(Particle Image Velocimetry)測定により、人の咳の伝搬特性把握を行った。
2) 透析室の快適性に関する実態調査:病院の中央監視データによって年間を通じた空調運転状況を調査し、現状を把握した。また、順天堂大学医院人工腎臓室において、室内温熱環境、空気質に関する実測調査を行うとともに、医療スタッフ、透析患者の室内環境の申告調査を行った。透析患者は貧血や主に糖尿病に起因する血行不良により健常者に比べ体感温度が低くなりがちであり、同様の室内環境において医療スタッフとの間で快適性の差が生まれやすいことを定量的に示した。
3) 模擬咳気流発生装置の開発:感染者の咳によって飛散するウイルスを含む飛沫及び飛沫核による感染リスクの低減効果を検証するために、人体の気道を再現したマネキンを接続した模擬咳気流発生装置を開発した。咳気流の流量、流速、形状、温度をPIV測定などの被験者実験結果と比較し人間の咳を可能な限り再現できるようにした。また、飛沫感染及び飛沫の付着による接触感染を模擬するためにアデノシン三リン酸(ATP)溶液を用いた。この測定法にはさらなる検討が必要なことがわかった。
4) 効果的な清掃・除菌方法の検討:接触感染対策に有効な清掃方法に関して検討を行った。模擬咳気流発生装置を用いて、咳の飛沫の付着場所を確認した。有効な清掃箇所を指摘した。また、人間行動を観察することにより設備、什器などの接触頻度を算定した。