表題番号:2011B-122 日付:2012/03/31
研究課題「シティ・リージョン」を単位とする戦略的社会空間政策再編に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 後藤 春彦
(連携研究者) 理工学術院 助教 佐藤宏亮
研究成果概要
本研究では、空間計画のみならず、社会空間政策として「シティ・リージョン」を位置づけ、都市・地域を牽引する重要なコンテンツを「ナレッジ・シティ」と呼ばれる知識集約型産業を核とする都市像に求め、EUにおける戦略的な社会空間政策の方法論(見通しと枠組み)を明らかにすることを目的とする。
国境を越えた都市間競争が激化するEUでは、積極的に都市圏をこえた広範囲のエリアを「シティ・リージョン」と位置づけ、これを計画対象とする動きが活発化している。都市と農村は21世紀のライフスタイルを受けとめる新たなネットワーク型の「シティ・リージョン」として再編することが時代の要請となっている。
さらに、EUで進められている「スペーシャル・プランニング」の本質は部分から全体へと積み上げていく「積分」型の統合計画であり(旧来の土地利用計画を基礎とする都市・地域計画とは一線を画するもので)、計画の理論的研究の充実は急務である。
また、「ナレッジ・シティ」に関しては、「ミリュー(milieu)」と呼ばれるような社会的文化的環境創造に向けての研究の充実が期待されている
研究の初年度にああたる2011年は文献研究とドイツにおける大都市圏政策の実態を分析し、EUの「シティ・リージョン」の枠組みを「主体間横断」「分野間横断」「行政境界横断」の3点から、以下のように明らかにした。

高度なモビリティを活かした都市と地域の連携のもとで、「シティ・リージョン」という自律的な単位に高次のQOLを提供する都市社会活動のコンテンツの枠組みが示された。
1)主体間横断:地域主権社会における各種アクター(市民、企業、公共団体、NGOほか)の相互補完関係の枠組み
2)分野間横断:縦割りになりがちな多様なテーマ(経済、福祉、環境、防災、景観などの分野)を調整・統合するための社会空間に対する計画的な枠組み
3)行政境界横断:分権社会における地域ネットワークや地域間競争を視野に入れて、(国境や県境、都市圏をこえて)都市と都市、あるいは、地域と地域が結びつく枠組み

次年度以降、知識集約型産業立地の空間的条件、集積パターン、従業者の場所選好性を明らかにするとともに、空間の質への関心を高め、知識集約型産業を核とするコンパクトな都市像のもとで「ナレッジ・シティ」の計画理論を示すことをめざしたい。