表題番号:2011B-121 日付:2012/04/07
研究課題スペイン、カタロニアの伝統的石造民家マジアの修復・再生に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 入江 正之
研究成果概要
今年度については、2回にわたる現地調査と文献研究の促進という二つの側面から研究成果を納めている。2011年9月における第1回の現地調査は、修復・再生研究における第三段階の研究対象遺構のA-3 住戸が対象で、既存棟は全崩落している1階建て住戸をオリジナル工法に則って復元し、ただし機能内容を変更し、建築デザインワークショップの場であるA‐1、農民資料館としてのA‐2の両住戸の、宿泊・一時滞在等の補助的な機能と、対象遺構のある市の住民との集会・交流の場としての外部広場を設けることになるが、現地の左官・石工からマジアのオリジナル工法について説明を受けたうえで、専任助手、院生ならびに学部生の研究チームが左官・石工の指導のもと、外部の集会・交流の場の石の台座を3日間かけて自力建設すことができた。崩落した壁体の残存部分の解体、当該の壁体からの石の採取と選定、並行して石積みの地面部分の粘土層および岩盤層までの掘削、さらに石同士をジョイントする現地用語でアルガマサ材の生産などの作業をとおして、マジアの制作技術および過程を研究チームが継承することができた意味は大きい。アルガマサに使用した材料は、水、石灰、セメント、赤砂、白砂であり、基本的な配分は、前から7:5:5:10:15であった。全作業についての写真、およびヴィデオでの記録を残している。研究代表者は、バンデジョス・イ・ロスピタレット・リンファント市庁にて、新市長と会見を持ち、今後の研究継続における当該市庁の協力を確認することができた。また、前市長の引き続きの協力もお願いすることになった。現地研究拠点であるバルセロナにおいては、カタルーニャ学術研究探訪センターのBerrenguer Vidal氏と打ち合わせを持ち、カタルニャ州におけるマジアの記録資料の整理の実態と、残存遺構の状況などを窺うことができた。また、カタルーニャ建築家協会などで関連文献資料の収集を行った。また2012年3月における第2回現地調査は、イタリアのコモを経由してバルセロナでの文献資料収集に多くの時間を費やすとともに、当該研究の日本側スペイン側のコーディネイター諸氏と、直接、あるいは電話にて来年度作業予定について打ち合わせを行った。カタルーニャの建設技術についての由来について、コモの工匠との連関で述べられることが多いいが、コモ現地にて石積みの民家を目視ならびに写真によって記録できた。関連を実証できるレベルではないが、今後の研究課題であることを実感できた。特定課題助成によって、研究課題の第三フェーズに向けての準備と、さまざまな知見を得ることができた、考えると同時に、謝意を表するものである。