表題番号:2011B-120 日付:2014/04/09
研究課題水酸化物・硫化物処理法における不均一・不可逆反応機構の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 所 千晴
研究成果概要
ヒ素(As(V))を対象として、水酸化第二鉄または水酸化アルミニウム共沈法における不可逆、不均一機構の解明をすべく、収着等温線作成、ゼータ電位測定、XRDおよびXAFS解析を行った。As(V)を10ppm含有するpH5の溶液に対して、共沈法と吸着法による処理特性を比較したところ、水酸化第二鉄、水酸化アルミニウムの双方において、共沈法では吸着法よりも高い処理特性が得られた。収着等温線の形状を比較すると、吸着法では通常のラングミュア型であったのに対し、共沈法ではBET型が得られたことから、共沈法では吸着以上の機構によるAs(V)の水酸化物への取り込みが生じていることがわかった。また、ゼータ電位と収着密度の関係をプロットすると、共沈法の場合には、初期As/FeまたはAlモル比が小さい範囲では収着密度の増加に応じてゼータ電位が低下するのに対し、初期As/FeまたはAlモル比が大きい範囲では収着密度が増加してもゼータ電位がさほど変化しないという傾向が得られた。その境界値は、水酸化第二鉄では初期As/Feモル比0.4程度、水酸化アルミニウムでは初期As/Alモル比が1.5程度であった。このことから、共沈法を用いた場合、初期As/FeまたはAl比が大きい範囲では、As(V)は水酸化物と溶解度積は満たしていないにもかかわらず表面沈殿を生成していることが確認された。この表面沈殿生成は、XRDおよびXAFS測定からも裏付けされた。すなわち、XRDパターンを比較すると、As/Fe=0.4以上では、別途参照物質として作成した非晶質ヒ酸鉄に似たパターンが得られ、As/Al=1.5以上では、やはり別途参照物質として作成した非晶質ヒ酸アルミニウムに似たパターンが得られた。また、XANESスペクトルにおいても同様の傾向が得られた。共沈法において得られたXANESスペクトルに対し、As(V)を吸着した水酸化物のスペクトルと非晶質ヒ酸鉄または非晶質ヒ酸アルミニウムを参照物質としてその割合をパターンフィッティングにより求めたところ、非晶質ヒ酸鉄または非晶質ヒ酸アルミニウムの割合が50%を超えるのは、これまでの他の実験結果と同様にAs/Fe=0.4またはAs/Al=1.5以上であることが確認された。