表題番号:2011B-107 日付:2012/04/16
研究課題光ネットワーク用超低消費電力高速多チャンネル光スイッチの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 宇高 勝之
研究成果概要
これまで我々が作製してきたハイブリッド構造を有するInAlGaAs マッハ・ツェンダ型光スイッチ(MZ-OS)は偏光・波長依存性、消費電力、スイッチング速度の観点から光パケットスイッチング(OPS)実現に資する特性を有していると考えられる。しかしながら入出力ポートが2x2と小規模であり、実用のためにはこれを拡張する必要があった。そこで我々は従来のハイブリッド構造を有するMZ-OSをカスケード接続する事で4x4 ポートのポート数拡大の検討を行った。素子作製方法は、用いたマスクパターンの違い以外は、上記の2x2光スイッチと同じである。2x2のMZ-OSを単位スイッチとしてこれを3段にカスケード接続した構成となっており、得られた素子のチップサイズはおよそ0.8 mm x 5 mmであり、従来報告の同様のポート規模の強誘電体のスイッチと比較するとオーダーで小さく、化合物半導体を用いたスイッチにおいてもサイズの小さな部類に属すると考えられる。作製素子は、一部の出力ポートを除いて入力光の偏光に関係なく20dB以上の消光比のスイッチング動作を示し、スイッチング電流も約6mAと低電流であった。また、挿入損失は20dB程度であり大きな値ではあったが、単体の2 x 2スイッチにおける挿入損失と比較して大きな増加がなかった事から単位スイッチ間における結合損失など、カスケード接続に由来する超過損失は大きくない可能性が見出された。同様に本結果は、素子の挿入損失の主な原因がファイバと素子端面における結合損失である事を示唆している。本実験結果より、OPSに対応可能な高速、低消費電力、低偏光依存なMZ-OSのポート数拡張性に対して、これを単位スイッ素としたカスケード接続の有用性が示された。また、今回の素子では、実は導波路の欠損などにより全ルートの光接続は達成しておらず、両端で接続されたのは2ルートに止まっている。多ポートになるほど素子サイズは大きく複雑になることから、素子作製行程中での光導波部分での1箇所での欠損でも大きな致命傷になるため、格段の注意を要することが認識された。さらに、上述のように光スイッチ単体の特性向上と同時に、多ポート化への展開のためには、作製プロセスの高精度化と大面積高均一化が不可欠である。そこで、高精度半導体プロセスを活用することとした。そのために、まず通常のミドルメサで導波路を形成した場合のスイッチ規模とサイズについて算出した。その結果、16x16ノンブロック構成が1インチサイズ以内で収まること、また全ハイメサ構造では1インチサイズでは32x32ノンブロックスイッチマトリクスが可能であることなどが分かった。現状の素子特性を鑑みた現実的な目標設定として最大で8x8規模のノンブロック光スイッチマトリクスの作製を想定し、そのために素子レイアウトの最適化及びマスク設計を行った。