表題番号:2011B-098 日付:2012/04/11
研究課題超離散化手法によるデジタル-アナログ-ハイブリッド数理モデルの構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 高橋 大輔
研究成果概要
本研究課題は,デジタル(離散)とアナログ(連続)の数理モデルの融合をめざし,その理論と応用の構築を行うというものである.この研究目的に沿って行われた研究は以下のものである.

(1) セルオートマトンの初期値問題に関して,多項式クラスの可解セルオートマトンの探索と解構造の究明
(2) 束表現による時間発展方程式の可解クラスの探索
(3) 厳密なリャプノフ関数を持つ可解マッピングの微分,差分,超離散対応の提出
(4) 確率セルオートマトンの基本図の理論的解明

(1)においては,ECAと呼ばれる初等セルオートマトンを対象に,その初期値問題を議論した.時間発展則をmax-plus方程式によって表現し,初期値を用いて一般解を表現した際に,解に含まれる項数が多項式オーダーになるものがどれだけあるかを探索した.数式処理を援用しながら一般解の理論的導出を行い,ECAのうち約40%がこの多項式クラスに属することが解明された.

(2)においては,(1)の研究をさらに発展させ,束(lattice)における基本演算とmax-plus演算との関係を解明し,(1)で得られた多項式クラスのECAをすべて束表現に翻訳可能であることを突き止めた.これにより,0-1の二進表現によるデジタル時間発展系はmax-plus表現による時間発展系に,さらに束表現による時間発展系へと一般化されていき,デジタル系における理論的背景に束構造が深く関わっていることが解明された.

(3)においては,可積分な2階差分マッピングの保存量を利用して,明示可能な厳密なリャプノフ関数を有する2階差分マッピングの導出に成功した.さらに,その連続極限および超離散極限をとることで微分および超離散マッピングの導出に成功した.これにより従来に知られていなかった連続系と離散系のつながりが判明した.

(4)においては確率変数を含む粒子セルオートマトンをmax-plus表現で表すことにより,その特徴量を厳密に提出できることを示した.これにより,我々が用いているデジタル手法は確率系に対しても有効であることが検証された.