表題番号:2011B-087 日付:2012/04/13
研究課題FRPの表面コーティングによる長寿命材料の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 川田 宏之
研究成果概要
繊維強化プラスチック(FRP)の更なる長寿命化を図るために,「FRPの表面に金属薄膜を被覆して強化する」という新しい発想に基づく研究の提案を行った.金属薄膜の目的は,FRPの弱点である水分拡散を防ぐものであり,水分バリアーとして最も有効に機能するか検討を行った.具体的には,GFRPへのNi-Pめっき技術の確立,吸水試験による水分バリアー機能の評価方法の検討,Ni-Pめっきの膜厚変化による吸水特性のモデル化の三点について研究を行った.
GFRPへのNi-Pめっき技術の確立:母材をビニルエステル樹脂,強化繊維をEガラスクロスとした平織GFRP積層板(以降平織GFRPと表記)へNi-Pめっきを施す技術の確立を行った.通常の工程でめっきを行った際,亀裂やフクレなどのめっき不良が生じたため,基板である平織GFRPにあらかじめ物理エッチング(サンディング)を施すことでめっき不良が改善された.物理エッチングは#120~#2000まで行い,#1200が最適であると決定した.ビニルエステル樹脂および平織GFRPともにめっき浴浸漬時間と膜厚の関係を調査し,膜厚制御を可能とした.
吸水試験による水分バリアー昨日の評価方法の検討:通常の吸水試験を行った場合,同程度のNi-P膜厚に対しての重量増加率の変化の挙動がビニルエステル樹脂と平織GFRPで大きく異なった.この原因として,平織GFRPの端部(側面)をSEMで観察を行ってみたところ,ガラス繊維がむき出しとなっていたため,端部からの吸水が顕著に表れたからであると示唆された.そこで,片面のみから吸水するような試験機(片面吸水試験機)の創作を行った.片面吸水試験を行った結果,ビニルエステル樹脂と平織GFRPの重量増加率は似た挙動となった.
Ni-Pめっきの膜厚変化による吸水特性のモデル化:吸水試験の結果から,Ni-Pめっきの膜厚が厚くなるほど,吸水飽和したときの重量増加率が低下することが判明した.このような傾向は吸湿試験において試験片に対する相対湿度が変化すると,飽和したときの重量増加率が変化するという実験結果と酷似している.そこで,Ni-Pコーティングを施すことで,基板(ビニルエステル樹脂,平織GFRP)周囲の水分環境が変化すると仮定した.湿度環境下にさらされた際の吸水飽和したときの重量増加率の理論式の変形を行い,Ni-P膜厚に対する吸水飽和したときの重量増加率の予測が可能となった.
今後の展望として,水分バリアー機能がさらに向上されると考えられる多層めっきを施す必要があると考えられる.