表題番号:2011B-085 日付:2012/03/27
研究課題遠心型ターボ機械に発生する旋回不安定擾乱の挙動と旋回失速の予兆現象
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 太田 有
研究成果概要
旋回不安定擾乱は,軸流圧縮機や軸流送風機を部分流量条件で運転した際に発生する非定常現象として知られており,動翼翼端隙間が広い場合に動翼面上の圧力差に基づいて発達する翼端漏れ渦が非定常的に変動するために発生する.一方,遠心型流体機械でも,側板のない羽根車の隙間近傍に発生する非定常渦が原因となって発生することが報告されているが,隙間が全く存在しない側板付羽根車を有する遠心型機械での発生は報告例がない.本研究では側板付遠心送風機においても,旋回不安定擾乱が発生することを見出し,その原因が羽根車出口子午面内を周方向に旋回する渦であることを確認した.
本実験では,低比速度かつ大風量の遠心送風機を用い,羽根車出口流速の非定常計測,ならびに外部騒音圧の計測を行った.また,定常と非定常の2種類の自作コードを用いた送風機内部流れ場の数値解析を併行して行い,内部流れ状況と渦の挙動や関連を調査した.
遠心送風機の低流量運転時には,流速波形や外部騒音のスペクトル波形に翼通過周波数成分の約半分の緩やかなバンド幅上昇が観察された.しかも,騒音と流速のスペクトルでは,その発生周波数が異なり,互いに翼通過周波数の半分を中心としてほぼ対称の分布傾向を示した.この特徴ある分布傾向を説明するためには,この非定常現象の原因や音源が固定ではなく,相対的に移動していることが必要であり,音源が羽根車周囲を旋回する渦である可能性が指摘された.さらに数値解析結果より,羽根車子午面内に低流量域でゆっくりと旋回する渦が確認された.そこで,羽根車出口複数点に熱線流速計を設置して同時計測を行い相関解析を実施した.その結果,羽根車外周を旋回する渦は,舌部下流側で初生し,緩やかに成長しながら旋回速度を低下させ,その後,緩やかに減衰しながら加速して舌部近傍で消滅することが明らかとなった.
上記のように,本研究では側板付の羽根車を有する遠心送風機に旋回失速が発生することを実験的・数値的に示し,その原因が羽根車外周を周方向に旋回する渦であることを確かめた.