表題番号:2011B-084 日付:2012/09/20
研究課題次世代エネルギーシステムの最適更新計画
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 天野 嘉春
研究成果概要
 プロセス制御システムの分野では,末端機器同士における双方向ディジタル通信規格が普及し始めている.フィールド機器が通信機能を装備することによって,プロセス系の制御は新たな制御目的をターゲットとしてとらえることが出来るようになってきた.通信は,単なる物理量の信号のやり取りだけではなく,機器状態や通信データの信頼度を含むステータス情報など,さまざまな種類の,大量の情報をやり取りすることによって,新たなプラント情報を抽出可能にしつつある.
 このような背景のもと,動力システムおよびプロセス制御の分野では,「スマートプラント」と呼ばれる新たな研究トピックが国際会議のテーマとして取り上げられ始めている.従来の,一方向的な物理量信号のやり取りを基盤とした制御はもちろん,より広範な種類の情報を通信によって獲得することで,従来は不可能であった特定のプロセスの状態のより詳細な状態や,物理量信号の信頼度情報を利用した,モード遷移によるイベント駆動型の制御が様々なプラントで稼働している.そしてプロセスの状態量を計測,あるいは操作する機器内部の状態診断,また,それらを元にした新しいアセットマネージメントが可能になりつつある.しかし,現状,フィールドバスを用いた診断に関する研究は,バルブポジショナや伝送器一部の機器について取り上げられ,いくつかのベンダーを中心に研究されているが,それをシステム制御およびシステム計画に対してどのように取り込むべきか,有効な手法は提起されていない状況にある.これまでの製品品質コスト最小化を目的としたプロセス制御から,プラントのライフサイクル全体に亘ってのより広い意味での経済性すなわち,プラントのライフサイクルコスト最小化を目的としたプラント制御計画問題が,「スマートプラント」のための最適計画問題として今後ますます注目されると思われる.
本研究は再生可能電源導入住宅エネルギーシステム構成を対象に,その有効性を試算した.その結果,蓄電池などのバッファ要素の追加がシステム運用成績へ与える影響を明らかにし,コージェネと蓄電池やEVの組み合わせなど,様々なモデルケースを想定して解析するためのフレームワークを完成した.2012年度第1四半期にかけて,実運用データを収集し,蓄電池系などの構成要素のモデルパラメータを精緻化するための作業を継続している.一方,家庭用コージェネレーションシステムの実需要に対応する最適運用については,特に実運用データを反映した最新型PEFCコージェネレーションシステムを対象に,エネルギー需要パターンとシステムとの整合性を整理した.需要データのクラスタリングよる省エネルギー性評価手法は本研究における研究者との共同研究成果の一つであり,2012年度6月に国際会議にて発表する.そのほか,ユーザにとって最適な現在市販されている家庭用エネルギーシステムの導入指針を与え,システム運用の重要性を提示した.