表題番号:2011B-079 日付:2012/05/14
研究課題ラグジュアリー戦略の理論的枠組み構築と日本におけるブランドビジネスモデルの検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 教授 長沢 伸也
研究成果概要
 2011年度に行った研究によって得られた新たな知見等の成果は以下の通りである。
1.日本の地場産業・伝統産業の成功事例として以下の各社を成功事例として取り上げ、各社の製品がなぜ人々を惹き付け、他のブランドと何が異なるのか、経験価値創造、技術経営、イノベーションなどの観点から分析した。
 例えば、帆布製鞄の信三郎帆布(京都市)が顧客に熱烈に支持されているのは、旧一澤帆布を「お家騒動」で乗っ取られるという存亡の危機に際し、旧一澤帆布時代には無かった柄物や捺染染めを取り入れるというイノベーションと、職人の技術力に支えられている「こだわりのものづくり」により生み出された帆布製鞄が顧客にとっての経験価値を創造しているからであることを明らかにした。
 他にも、塩芳軒(京都市)の京菓子、末富(京都市)の京菓子、虎屋(東京都)の和菓子・羊羹、俵屋旅館(京都市)の宿泊サービス、山田松(京都市)の香・香木、唐長(京都市)の京唐紙、俵屋吉富(京都市)の京菓子、亀末廣(京都市)の京菓子についても分析した。
2.ヨーロッパのラグジュアリーブランドの成功事例としてシャネルやゲランを取り上げ、化粧品のコミュニケーション戦略、化粧品におけるラグジュアリーの要件、環境対応によるブランド戦略、アイコン製品による感性プロダクト戦略、および、デザイナーと企業の関係を分析した。例えばラグジュアリーブランドのシャネルやグッチのプロダクトは、色や形といった外形的な特徴に、歴史や哲学、技術などの目に見えない価値を融合させて差別化を図り、長期的な成功を収めている事例である。これらのプロダクトは、ブランドのアイコンとして、創業以来100年近くもの間輝きを保っている。そこで、アイコンプロダクトを多く持つラグジュアリーブランドのデザインマネジメント手法を、アイコン戦略として体系的に解釈し、様々な企業や業界が参考にできるような示唆を得た。
3.日仏のブランド企業に見るラグジュアリーブランドの構築条件を明らかにするため、ブランド構築条件の抽出に向けた事例分析と比較考察を行った。
4.地場伝統産業が今日そして近未来に直面する環境問題への対応が環境ビジネスとしてチャンスであるという観点から、環境対応商品や廃棄物ビジネスを含む環境ビジネス等を取り上げて検討した。