表題番号:2011B-070 日付:2012/05/13
研究課題組織ルーティンのダイナミック・モデル構築に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 教授 大月 博司
研究成果概要
 組織ルーティンは,ルーティンが知識の集合体であるという観点から,組織能力の問題としても扱われているが,近年特に,ダイナミック・ケイパビリティ(DC)との関連がより焦点となっている。DCは定義づけに不透明な点があるとはいえ,組織の競争優位性を説明する有力なコンセプトのひとつであり,組織ルーティンのダイナミック性との関連について明らかにすることが本研究の主眼である。
 組織ルーティンは,安定性を求める組織のロジックとして定着してきたが,安定性を求めれば求めるほど変化せざるを得ないという側面を有している。こうした安定と変化の関係が組織のコンテクストに依存することは明らかであるが,そのプロセスについては不明な点が多い。また,そうした現象において,組織の競争優位性を確保するための組織ルーティンの安定と変化のダイナミック性を捉える枠組みについては十分に解明されていない。
 そこで,本研究では,従来の組織ルーティン研究で欠落している点を埋めることを狙い,予備調査としてエレクトロス業界を対象に,仕事プロセスのルーティン化と変化を中心に,組織ルーティンのダイナミク・モデルの構築を目指した。その結果,今回の研究で明らかになったのは以下の点である。
・組織ルーティンの変化は,業績の変化と関係する。
・組織ルーティンの変化は,製品ライフサイクルと関係する。
・組織ルーティンの安定は,組織の成長と関係する。
 以上から,本年度の研究成果から今後注目すべき点として示唆されるのは,組織ルーティンの変化の必然性,と同時に,組織における多様なルーティン現象の存在である。そこで今後の課題となるのは,組織ルーティンのダイナミック・モデルの精緻化を図る上で,多様な組織ルーティン間の関係性の解明である。そのために,組織ルーティンの類型論とともに,時系列的な組織ルーティンの研究を通じて,ルーティン間の関係性とその構造,変化を明らかにすることが求められるのである。