表題番号:2011B-066 日付:2012/04/03
研究課題瀬戸内海での水柱有機物の三位一体解析による古水温代理指標の構築と温暖化記録の解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 助手 守屋 和佳
研究成果概要
TEX86は,海洋性古細菌であるCrenarchaeotaの膜脂質中の五員環数の変化に基づく古水温代理指標で,最近約10年間で活発に用いられるようになった(Schouten et al., 2002 and others).この代理指標は,元来,外洋域の海底表層堆積物のTEX86値と,その場の表層海水温の年平均値との相関関係から導かれた経験式に基づくものであるが(Kim et al., 2008; 2010),海洋性古細菌の培養実験からも,膜脂質中の五員環数と培養水温との間に相関関係が確認されている(Wuchter et al., 2004; Schouten et al, 2007).現世の外洋域における水柱中の粒子状有機物の分析から,海底表層に堆積する古細菌の膜脂質は水深約100mで生合成されたものと考えられている(Wuchter et al., 2005).また,実際に堆積物を用いた古水温推定の際に用いられる,堆積物中の古細菌膜脂質中のイソプレノイド骨格の分子組成は,堆積後も保存され得ることが示唆されている(Takano et al, 2010).しかし,この古水温指標は,これまで外洋域を対象として提唱・使用されてきた指標であり,生物量も豊富で地球温暖化に伴う環境改変の影響を著しく受けると予想される浅海域については研究の対象となってこなかった.
TEX86は,海洋性古細菌であるCrenarchaeotaの膜脂質中の五員環数の変化に基づく古水温代理指標で,最近約10年間で活発に用いられるようになった(Schouten et al., 2002 and others).この代理指標は,元来,外洋域の海底表層堆積物のTEX86値と,その場の表層海水温の年平均値との相関関係から導かれた経験式に基づくものであるが(Kim et al., 2008; 2010),海洋性古細菌の培養実験からも,膜脂質中の五員環数と培養水温との間に相関関係が確認されている(Wuchter et al., 2004; Schouten et al, 2007).現世の外洋域における水柱中の粒子状有機物の分析から,海底表層に堆積する古細菌の膜脂質は水深約100mで生合成されたものと考えられている(Wuchter et al., 2005).また,実際に堆積物を用いた古水温推定の際に用いられる,堆積物中の古細菌膜脂質中のイソプレノイド骨格の分子組成は,堆積後も保存され得ることが示唆されている(Takano et al, 2010).しかし,この古水温指標は,これまで外洋域を対象として提唱・使用されてきた指標であり,生物量も豊富で地球温暖化に伴う環境改変の影響を著しく受けると予想される浅海域については研究の対象となってこなかった.