表題番号:2011B-057 日付:2012/05/07
研究課題米国内日本語蔵書と読者の関係の歴史、及びその現状・課題についての研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教授 和田 敦彦
研究成果概要
 本研究が目的としているのは、米国大学の主要な日本語図書館蔵書の成立、変化の歴史を明らかにし、それら蔵書のデジタル化を含めた現在の利用環境や、その問題点を明らかにすることである。蔵書成立の歴史情報と、現在の利用環境との両者をとらえることで、海外の日本語文献の国際的な利用、活用の可能性と問題点が明らかにし、日本文学研究領域はもちろんのこと、様々な研究領域にわたる学術情報を提供していくことを目的としている。
 米国における日本語書籍のデジタル化状況、及びその利用上の問題については、ミシガン大学、ハーバード大学、スタンフォード大学をはじめとした主要日本語蔵書の調査を完了し、その成果について、本研究代表者が著書『越境する書物 変容する読書環境のなかで』(新曜社)を刊行した。同書ではまた、特に米国と日本との書物流通の仲介をした組織、人々の活動に焦点をあて、戦前の国際文化会館の活動、角田柳作、及び高木八尺の活動について、新たな資料を掘り起こし、明らかにしていった。さらに、米国のみならず、カナダにおける日本語蔵書の歴史をもとらえることで、海外の日本語蔵書史の比較、相関の中で研究方法を深化させていくことが可能となった。
 こうした海外の日本語蔵書をめぐる研究を、書物の流通と享受の問題として、より応用範囲の広い研究としても展開していった。すなわち、書物と読者の関係を歴史的にとらえていく方法として、日本国内の研究対象にも応用していった。そのための研究グループ、リテラシー史研究会の活動として成果をまとめ、年刊の研究報告書『リテラシー史研究』として刊行した。本研究代表者は、日本の近代における社会教育機関としての図書館が、家庭の中の小規模な蔵書環境の成立、変化に果たした役割を検証していった。
 また、研究期間中には、これら著書、論文に加え、研究成果を、私立大学図書館協会、群馬県立図書館、立教大学で研究報告、講演として広く発信していった。同時に、関連する研究データを、本研究代表者の運営するウェブサイトで公開していった。