表題番号:2011B-041 日付:2012/04/13
研究課題ヨーロッパ型「共生社会」の形成と政治文化システムの変容に関する比較史研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 森原 隆
研究成果概要
 本研究は、前年度までのテーマを継続・修正し、「ヨーロッパ史における「共生」の形成と政治文化の形成」
というテーマに基づき、ヨーロッパ史の各時代・地域・領域において展開される、エリート等の支配層・指導層
と市民等の一般庶民・民衆層の「共生」さらには民族、言語、宗教的差異を超えた「共生」の活動や実態を、
政治文化や社会システム変容との関係で比較史的に考察・検討した。本年も、研究分担者が、それぞれの研究
分担課題について、史料文献の収集と研究史の把握に努め、研究会での報告や議論をとおして研究課題の検討
をそれぞれ行なった。
 まず2011年4月に合評会を開催した。飯田洋介氏著『ビスマルクと大英帝国(勁草書房、2010年刊行)、
中澤達哉氏著『近代スロヴァキア国民形成思想史研究』(刀水書房、2009年刊行)に関する書評・論評である。
また2011年7月には、研究会と総会を開催した。小森宏美氏による「 国民国家の形成と「共生」の模索:両大
戦間期エストニアの文化自治」と題する研究報告がなされた。また2011年12月にはシンポジウム: ナショナ
リズム再考―ヨーロッパ近代の国民形成と政治参加―を開催した。これは、小原淳氏の近著『フォルクと帝国
創設』、彩流社、2011年、をめぐって、松本彰氏(新潟大学)「19世紀ドイツにおける市民社会、国民国家、
戦争―協会運動と三重のナショナリズム」、 中澤達哉 (福井大学)「18-19世紀ハプスブルク複合王政下の
近代国民形成と政治的正統性:ヨーロッパの「極端なる典型」」という2本の研究報告がなされ、これをめぐ
って、非常に熱気あふれた論評と質疑応答が展開された。今後は継続してヨーロッパ社会における「共生」
の問題を政治文化を中心に検討し、2012年9月末締め切りで、個人の分担研究課題に基づいた研究論文を執筆し
(約20名)、2013年3月に共同研究書の刊行をめざして、準備をすすめてゆく予定である。