表題番号:2011B-033 日付:2014/03/05
研究課題20世紀型資本主義の越境的再定義:日英旧産炭地の産業・労働に関する総合的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 嶋崎 尚子
研究成果概要
本年度の特定課題研究では、炭鉱社会と閉山後のコミュニティに関する国際比較研究を視野にいれた日本国内での主要産炭地の比較研究を進めた。具体的には以下の2課題に集中的に取り組んだ。
(1)北海道における炭鉱離職者の道内炭鉱間移動の実態とそのメカニズムの解明:1960年代、いわゆる「スクラップ・アンド・ビルド期」における北海道内での炭鉱離職者の炭鉱間移動についてはこれまで明らかになっていない。そこで、北海道炭鉱離職者雇用援護協会(2006年解散)、北海道炭鉱離職者福祉協議会の関係者から当時の各ヤマ閉山時の離職者対策ならびに資料についてヒアリングを行った(2011年7月)。その結果、当時の離職者の就職希望に関する資料はすでに廃棄されているが、いくつかの関連統計資料、名簿資料の利用が可能であることが判明し、資料収集ならびにデータベース化に着手した。
(2)太平洋炭砿閉山離職者の就職対策ならびにKCMの実態把握:現在国内で稼動中の唯一の産炭地である釧路への現地調査を3回実施した(2011年8月、11月、2012年3月)。2002年に閉山した太平洋炭砿閉山離職者の就職対策に関する一次資料ならびに関係者ヒアリング、稼動中の釧路コールマイン(KCM)の設立経緯等に関するデータ収集を進めた。その結果、太平洋炭砿閉山離職者全員の再就職過程に関するミクロデータ分析ならびに閉山直前のキャリアデータとの連結が可能となり、本格的な離職者の再就職過程に関するライフコース分析に着手したところである。
なお釧路炭田については、幸い、地元市立博物館学芸員、太平洋炭砿管理職OB会、釧路市教育委員会等との連携体制が整い、2012年度より総合的な地域研究(「石炭産業終息期における炭鉱と地域社会:最後のヤマのライフコース」研究)を3ヵ年の予定で実施することとなった。

いうまでもなく1970年代までの日本の石炭産業は、筑豊地域、西彼杵地域を中心に展開してきた。産炭地研究もこれらの地域を対象に蓄積され、九州大学資料センターには石炭産業に関する一次資料が膨大に集積されアーカイブ化されている。そこで産炭地比較研究の視座を整理する目的で、2012年3月に九州大学ならびに筑豊地域を訪問し、データの現状を視察した。今回の訪問をとおして、あらためて筑豊地域での石炭産業史を概観し、筑豊石炭鉱業組合の果たした機能など、産炭地比較研究を進める際の着眼点を検討した。