表題番号:2011B-027 日付:2012/03/13
研究課題グローバル化時代における倫理的責任の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 御子柴 善之
研究成果概要
「グローバル化時代における倫理的責任の研究」と題した本研究の中心は、本年度で5回目を迎えた日独倫理学コロキウムをドイツ連邦共和国のボンで開催することだった。計画通り、同コロキウムは「グローバル化時代の倫理学Ⅱ-<9.11>から10年が過ぎて-」という題目の下、2011年8月26日に開催された。研究発表は、以下の6本である。「任意の、いつでも解消可能な集まりとしての会議」舟場保之氏(大阪大学)、「討議倫理と異文化相互間倫理の問題」W・クールマン氏(アーヘン工科大学)、「<9.11>に対峙して、我われはどのように道徳哲学的な思考を展開できるか」寺田俊郎氏(上智大学)、「2001年9月11日以降の哲学-変わってしまった世界における実践哲学の課題のために」M・ルッツ¬=バッハマン氏(フランクフルト大学)、「グローバル・エシックスにおける自己自身に対する義務」御子柴善之(早稲田大学)、「カントと政治哲学におけるコスモポリタニズムをめぐる論争」A・ニーダーベルガー氏(フランクフルト大学)。今回のコロキウムは、冒頭よりたいへん緊張感に満ちた議論が展開され、ドイツ側出席者から5回の中で最高に充実していたという感想が聞かれるほどだった。その内容は、一方で、カント哲学を基盤としつつも、他方で、<9.11>から10周年であることを全員が踏まえ、討議倫理、ハーバーマスの所説、アメリカ合衆国市民によるピースフル・トゥモロウズの動向にも言及することによって、グローバル化時代における倫理学を再考するものとなった。なお、当日の原稿は、すでに冊子として印刷済である。また、コロキウムに先んじて、第4回コロキウムの発表原稿を「グローバル化時代における倫理的責任」という題名の下、冊子として印刷した。今回のコロキウムの成功に基づいて、すでに第6回日独倫理学コロキウムを、「グローバル化時代における人権」という題目の下、2012年8月に、今回と同じくボンで開催することが決定している。本コロキウムが、早稲田大学の施設を基盤としつつ、日本とドイツの倫理学研究者が交流する場として確立しつつある。なお、2011年3月には、本コロキウム参加者であるルッツ=バッハマン氏とニーダーベルガー氏を編著者とする著作『平和構築の思想-グローバル化の途上で考える-』が、舟場氏と御子柴の監訳によって梓出版社から翻訳・刊行されたことを、本コロキウムに関連する成果として付言しておきたい。