表題番号:2011B-023 日付:2012/04/13
研究課題特別なニーズを持つ子どもの親の支援方法とシステムについて日本・韓国の比較研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 喜多 明人
(連携研究者) 大学院文学研究科 助教 安部 芳絵
研究成果概要
本研究では、障がいを持つ子どもの親支援について、親・子ども双方の自立を支え、個人の尊厳を保証していくシステムを明らかにするために、障がい児(者)及びその親に対する支援を行っている実践者に対して「親と支援者の関係」、「子どもとおとな(親および支援者)の関係」「親同士の関係」に焦点をあてて研究を行った。具体的には下記を研究対象として、聞き取り調査を行った。
(1)東京都板橋区教育委員会社会教育指導員
東京都板橋区の大原社会教育会館において障がい当事者及びその家族を対象とした講座を担当している社会教育指導員に対し、講座の内容・実施方法、障がい児の親の抱えている課題、障がい児の親を対象とした講座実践における課題やむずかしさ等についての聞き取り調査を実施した。
(2)大阪府豊中市特定非営利活動法人ハニー・ビー
障がいを持つ子どもの自立・社会参加を支える一環として、1.療育支援事業、2.児童デイサービス、3.障がい児者居宅介護・移動支援を行うNPO法人ハニー・ビーを訪問し、理事長に対し、親へのかかわり、子どもへのまなざし、実践の内容等についての聞き取り調査、児童デイサービスの観察調査を実施した。
(3)大阪府豊中市教育委員会
大阪府豊中市は、支援教育の枠組みの中で医療的ケアの必要な子ども達に対して学校に看護師を派遣し、子どもに対する手厚い支援を行う先進的な自治体である。本調査では、学校現場における支援実践の担い手である看護師や、豊中市こども未来部こども政策室こども支援チーム企画グループ長に対し、事業内容、子どもとのかかわり方・まなざし、実践上の課題等について聞き取り調査を実施した。
(4)東京都江東区教育委員会社会教育主事、同区福祉部障害者支援課エンジョイ・クラブ指導員
江東区において「家庭教育学級」や「幼児を持つ親の学級」を担当している社会教育主事と、「障害児・者を持つ親の学級」担当している、知的障害者学習支援事業エンジョイクラブの指導員に対して、講座の内容、親とのかかわり、子ども(障がい児・者)に対するまなざし、事業が抱える課題等について聞き取り調査を実施した。
上記の調査により、障がい児を持つ親が非常に過重な負担のもとに置かれているということ、また、子どもの権利保障にかかわる実践において、しばしば、子どもの育ちを阻害する存在として親が認識されていること、そして、その関係の転換を図る試みについては、制度上の困難や、支援者側の意識の問題から、不十分な取り組みしか行われていない現状が明らかになった。支援者が親とどのような関係作りをしていくのか、おやの育ちをどう支えていくのかという点が、子どもの権利保障を担っていくうえで、実践現場の抱える課題の一つであることがうかがえた。そしてこの点については、障がい児支援の現場で活動している支援者の多くが、本人も障がい児の親であることが多く、支援者支援の必要性が感じられた。
なお、詳しい研究成果は日本教育学会第71回大会で発表を行なう予定である。