表題番号:2011B-005 日付:2013/05/14
研究課題日本企業におけるグローバルマネジャーの国際人的資源管理に関する総合的基礎研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 教授 白木 三秀
研究成果概要
2000年以降、中国を皮切りにしてその後インド、ベトナムなど新興国市場の成長とそこへの日本企業の投資が増大している。これに伴い、1国を超えるネットワークを持ち、グローバルな観点を持ち、そして成果を出せる「グローバル人材」への需要も増大している。
本社から重要なミッションを託され、海外子会社等に派遣される海外派遣者は、グローバル人材の最たるものであろう。そこで特定課題研究においては、長期にわたり海外の子会社等に勤務する日本人海外派遣者が現地の部下からどのように評価されているかという調査結果を再検討し、企業事例を中心に調査を実施した。
 アジア人部下の直属上司への評価を日本人上司(派遣者)とアジア人上司とを比較し、統計的に1%か5%水準で有意な差のある項目だけを見ると以下の通りである。
役員などの日本人トップ・マネジメントの方が高く評価される項目は、皆無であった。
逆に、日本人トップ・マネジメントが劣ると評価される項目には、対外交渉力の弱さ、社内外の人脈の乏しさという2項目が含まれていた。
日本人ミドル・マネジメントがより高く評価される項目も、皆無であった。
他方で、日本人ミドル・マネジメントがより低く評価される項目には、対人・部下育成能力、業務遂行能力から異文化リテラシーまで幅広く広がり、実に62項目のうちの45項目が含まれていた。
実にショッキングな結果といわざるを得ない。もちろん、数年間滞在するだけの日本人派遣者の場合、とりわけ部下との関係において、これらの評価の違いは割り引いて考える必要があろう。
しかし、現地のビジネス・チャンスが広がり、日本人派遣者の役割と現地人材の確保がますます重要になっていく中、日本人派遣者は同レベルのアジア人上司より厳しく評価されていることは否めない。これらは、新興国市場やASEANにおいて日本人派遣者が語学力不足を超えて、多くの課題を抱えていることを示唆している。事例調査においてもこの点は確認された。