表題番号:2011A-979 日付:2012/04/13
研究課題低密度極低温ターボポンプの効率、キャビテーション性能向上に関する最適設計手法の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 宮川 和芳
研究成果概要
1.背景
 液体水素、LNG等の輸送に使われる極低温用ポンプに関して、今後、ロケット向け再利用型ターボポンプや液体水素供給用ポンプ、環境負荷低減のための高効率LNGポンプなどの開発が予定されている。これらの種類のポンプについては、従来より産業用ポンプの開発研究成果の横通しが実施され実用化されてはいるが、前述の用途ではさらなる効率、信頼性の向上、運用範囲の拡大が求められる。特に、液体密度の小さな液体向けターボポンプに関しては、羽根車の設計形状も流体密度の大きな産業用ポンプ、流体密度の小さな遠心圧縮機の両方の特徴が混在していて、効率、キャビテーション等の流体性能向上のための最適化手法が十分研究されてはいなく、内部流れの精査による性能改善の余地が残っている。本研究では、従来研究提案者が実施してきた遠心羽根車の内部流れ、キャビテーション性能改善の研究成果をベースに特に流体密度の小さな極低温流体用ターボポンプ課題を解明し、今後開発されるポンプの最適設計コンセプトを構築、性能向上に資する。

2.研究目的
 低密度極低温用ターボポンプの設計点、非設計点での損失発生メカニズムの解明、キャビテーション性能の予測、およびそれらに基づく設計指針の構築

3.研究結果
3.1 低密度極低温向け(液体水素)ターボポンプの仕様、設計手法のベンチマーク
従来の国内外の低密度極低温向けターボポンプとしてLE7、LE5、RL10A、J-2、J-2S、SSME等のロケットエンジン向け液体水素ターボポンプ他の寸法、形状、性能を調査し、設計手法、特徴等をまとめた。ベンチマークの結果、角運動量を決めるインペラ出口角等の最適化は検討の余地があり、以下仕様のJAXA液体水素ターボポンプに関して検討を進めることとなった。検討仕様(ポンプ形式:インデューサ付2段遠心ポンプ、回転数:42000rpm、流量34.3kg/s、比速度140rpm,m,m3/min、入口圧力0.34MPa、出口圧力26.7MPa、入口温度20.7K、インデューサ直径163.8mm、主羽根車直径238mm)
ただし、本研究では、上記仕様のうちインペラの

3.2 遠心羽根車、ディフューザ形状モデリング手法の構築
 一次元性能予測、CFD等の検討に用いることができる三次元羽根車、ディフューザの形状モデリングプログラムを構築。子午面、翼角分布で得た特徴をコントロールすることができるようにパラメータ設定を実施した。

3.3 羽根車設計パラメータの変化による内部流れ、損失メカニズム変化の定量的予測
 要求仕様に合わせて羽根車を設計し、それらの負荷を変化させることにより羽根車の内部流れ、損失発生メカニズムの定量的変化を把握した。
 翼出口角を大きくすることにより高負荷化で下流ディフューザの損失が増加する。性能向上のためのポンプの反動度、負荷分担を明確にした。予測には、一次元損失モデルをベースとしたプログラムを作成し性能評価に用いた。

3.4 CFDを用いた羽根車、ディフューザの最適代表寸法、三次元設計形状の検討
 汎用CFDコードを用い一次元性能評価結果をベースに設計した羽根車、ディフューザのさらに詳しい内部流れを把握した。また、内部流れの評価により代表寸法の最適化を図った。

3.5 低密度極低温流体向けポンプ羽根車、ディフューザの最適設計手法まとめ
 圧縮機、水用ポンプ羽根車との比較をベースに、低密度極低温流体用ターボポンプの設計手法をまとめ、最適設計結果のポンプ形状に関しては、効率、キャビテーション性能を設計点、非設計点で予測し、設計データベースとして整理する。また、流体密度に関しての設計手法もまとめる。

4.成果
 従来の極低温用ポンプは、信頼性の確保を最重要プライオリティとして設計されてきたが、本研究では、低密度流体向け羽根車の流体性能、設計手法を検討し、さらなる効率、キャビテーション性能の向上を検討した。空気機械と水力機械の中有間的特徴を有する低密度流体向けポンプの研究は、流体密度に関して設計手法の横通しを図るものであり、新しいトレードオフの実施方法、形状決定プロセス等が設計指針の他成果として残り、今後の流体機械開発に有用である。