表題番号:2011A-935 日付:2012/04/04
研究課題中学・高校の体育授業における教師のフィードバックの適切性に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 准教授 深見 英一郎
研究成果概要
体育授業ではすべての生徒を運動やスポーツに親しませ,上手くさせることが求められる。そのため教師は生徒の運動学習に対して適切なアドバイス(技能的フィードバック)を与える必要がある。しかし教師が適切なアドバイスを与えたとしても,生徒がその内容を理解できなければそれは適切とは言えない。そこで,運動の専門的知識・技術を理解したり判断したりすることができる中・高校生の体育授業を対象に,教師のフィードバックの適切さを検討したいと考えた。これにより,日頃,運動の苦手な生徒の指導に悩んでいる教師たちに手がかりを与えることができると考えた。運動の苦手な生徒に対して教師が積極的に関わるようになれば,彼らの積極的な取り組みと技能成果の向上が期待できる。このように教師のフィードバックの「適切さ」を検討することは,すべての生徒を運動やスポーツに親しませ,上手くさせることにつながると考えられる。
一方で,数々の研究から中学・高等学校の体育授業では教師の肯定的な相互作用行動が非常に少ないことが指摘された。そこで,フィードバックの適切さを検討する前に,まずは「いかに授業中の相互作用行動を増大させることができるか」を検討することにした。
具体的には,相互作用行動が多い熟練教師と少ない初任教師の体育授業中の教師行動を観察・分析することによって熟練教師の優れた指導方略を明らかにしようとした。対象は,単元過程でみたボール運動(ゴール型)2単元15授業であった。熟練教師は単元過程で自立的な運動学習時間を確保して,その中で数多くの相互作用行動,なかでも技能に関する肯定的・矯正的フィードバックを与えた結果,より多くの生徒から「役に立った」と受けとめられていた。一方,初任教師は単元過程でマネジメント場面と行動的フィードバックが多くなった結果,生徒が助言を受けとめた割合が少なかった。初任教師の授業では,一部の生徒がなかなか集合できなかったり教師の話を集中して聞くことができず授業が予定通り進行できなかったために,教師は生徒の望ましくない行動・態度に対して注意を与えざるを得なかった。結局,それは教師の説明が不十分であったり課題ゲームのルールが曖昧であったりしたためである。
以上の結果から,肯定的な相互作用行動を促進するためには,生徒の学習規律を確立し,自立的学習が営まれる運動学習時間の中で,教師が生徒と数多くの相互作用行動を営むことが重要であることが示された。特に,技能に関する肯定的・矯正的フィードバックを与え,より多くの生徒から「役に立つ助言を受けた」と認識させる必要がある。
今後は,教師の技能的フィードバックに着目して,その内容が実際に生徒のつまずきや問題に対応し,問題解決につながっていたかを客観的に検討していく必要がある。