表題番号:2011A-920 日付:2012/04/11
研究課題誘発筋電図による促通・抑制試験における最大振幅指標とRMS値指標の比較
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 准教授 村岡 慶裕
研究成果概要
ヒトの中枢神経系の特性を調べるために、MEP(運動誘発電位)やH波などの誘発筋電図がしばしば用いられている.これらの手法は、誘発筋電図を誘発するための試験刺激に先行して与えられる、ある一定の潜時をもった条件刺激や運動イメージにより変化する誘発筋電図を捉え、それを指標として特定部位あるいはシナプスの促通や抑制を調べる.誘発筋電図の変化を捉えるための指標としては、最大振幅値を用いる場合と、一定期間の積分値を用いる場合があるが、この両者の差異については検討されていない.両者で差異が存在した場合、これまで同一として扱われてきた試験結果について、用いた指標に応じた解釈が必要となるため、確認しておく必要がある.そこで、誘発筋電図による促通・抑制試験における最大振幅指標と一定期間の積分値(RMS値)指標を用いた場合の結果を比較することを目的とした.運動誘発電位の多くは、振幅方向に相似であることから、両者に差異は存在しないものと考えられる.
記録データは、健常者5名の右側短母指外転筋(APB)のMEP波形を用いた.各被験者において運動イメージの異なる40試行分のMEP波形を取得した.被験者毎に磁気刺激後20msから50msの波形を切り出し、同一試行中の最大振幅指標(最大値‐最小値)と切り出し期間のRMS値指標を算出し、相関係数を求めた.
相関係数は、各被験者において、(0.01、0.01、0.01、0.4、0.5)となり、相関は認められなかった.
本研究より、今まで同一として扱われてきた最大振幅指標とRMS値は、誘発筋電図のうち少なくともAPBのMEPにおいては、大きな差異があり、別の解釈が必要であることが分かった.今後、積分期間による差異や別部位のMEP波形の差異、H反射などの別の誘発筋電図などにおいても調査し、差異の原因やそれぞれの指標における解釈の方法を検討する必要があるものと考えられた.