表題番号:2011A-908 日付:2012/03/26
研究課題太陽光などを効率良く集光するための導波路型光集光・伝送デバイスの研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授(任期付) 坪川 信
研究成果概要
H23年度は、ソフトウェアツールを用いた導波路形状の作成と基本特性の分析に取り組んだ。また、実際の光ファイバを用いた場合の微小部分の変形による光の取り込み効果の検討を実施した。設計及び計算用のPCと導波路断面等を観察するための簡易顕微鏡等を購入し、情報収集の一環として国際会議、展示会参加費用の一部を支出した。

初めに、自然光集光に関する参考文献等を調査分析し、多様な方式の原理理解、現行の性能、課題等について情報収集した。太陽光の集光器に関しては、mm以下のミクロな構造をもつ特殊レンズ加工を施したものが主流で研究されているが、価格面、技術面の困難さが課題である。新たな方式として直接光ではなく蛍光を介することで特殊形状の加工が不要かつ、集光効率を向上させる有望な方式が提案されている。この方式は有望であるが、蛍光材料等が特定され、権利化もされているため、本研究では、集光効率の最大化ではなく、簡易さと経済性を追求し、特殊材料・高精度加工を必要としない比較的簡易な集光器の設計を当面の目標とした。

具体的には、通常の2層、3層のガラス導波路をベースとし、コア・クラッド境界面を鋸歯状、正弦波状などに変化させた場合の構造モデルを作成し、外部側面方向からの照射光がどの程度取り込まれ、伝搬するかについて机上計算を行い、レイトレースのシミュレーションツールを用いて評価した。実際には修士学生がソフトウェアツールの使用方法の習得から、光学特性の条件設定までを学びながらモデル作成と評価を行った。残念ながら、現時点では、集光効率はまだまだ不十分であり、新たなモデル構築が最大の課題である。候補技術としては、境界面形状変化ではなく、空気等の散乱体を境界付近に付与した構造等を想定し、継続検討中である。
検討途上において、別な要求や派生技術の話題がいくつか生じた。一例として、通常の通信用途において細径の光ファイバへの側方からの光入射技術の課題が持ち上がり、現在平行して方式を検討中。主に2通りの方式が考えられ、現在はミクロな光ファイバ変形を利用する集光技術、ファイバグレーティングなど伝搬モード変換を利用した集光技術について机上検討を行っている。
研究成果は現在、研究室内での議論のレベルにあり、今後シミュレーションや実験を通じて具体化し、発表等を行う予定。