表題番号:2011A-904 日付:2012/04/10
研究課題マグネターの正体解明へ向けた超強磁場でのX線放射の観測的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助教 中川 友進
研究成果概要
 観測的・理論的な研究により、我々の宇宙にはB~10^15 Gもの超強磁場を持つ中性子星である「マグネター」が提案されている。本研究の目的は日本のX線天文衛星「すざく」を用いたX線・ガンマ線の観測的研究により、陽子のサイクロトロン共鳴散乱による吸収線を発見し、マグネターの磁場強度を直接的に測定することである。これは世界初の大発見になるだけでなく、B>4.4×10^13 Gでのみ可能な物理学の研究が初めて現実となる「宇宙の超強磁場実験場」の開拓になる。
 平成23年度は、マグネターが活発なバースト活動を示した際に行う「すざく」衛星による緊急観測の提案が評価Aで採択されており、実際に観測を実施した。アメリカのSwift衛星の観測チームにより、マグネターの1つであるAXP 4U 0142+614 が2011年7月29日にバースト活動を示し、少なくとも10個以上のバーストを起こしている事が報告された。その後、私はSwift衛星の観測チームと協力して定常放射のモニタリングを行ったところ、1ヵ月以上に渡って20-30%ほど明るい状態が続いている事が分かった。しかし、過去10年間において+/-10%ほどの変動しか報告されていない(Gonzalez et al. 2010, APJ 716, 1345)。そこで私はAXP 4U 0142+614が稀な活動期を示していると判断して、前述の「すざく」衛星による緊急観測を2011年9月7日に実施した。観測データを解析した結果、明確なバーストは検出できず、定常放射のエネルギースペクトルに明確な吸収線は見られなかったものの、静穏期と比べると定常放射が明るく、エネルギースペクトルが硬いことが分かった。これまでの研究では静穏期と活動期でのエネルギースペクトルの明確な違いは報告されておらず、重要な成果になると期待している。暗いバーストの探査、エネルギースペクトルの吸収線の探査など、より詳細な解析を進めている。