表題番号:2011A-877 日付:2012/03/04
研究課題ディペンタブルな低電圧LSI設計技術に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助教 史 又華
研究成果概要
 情報通信機器が高性能化するにしたがい、消費電力の増大が大きな問題になりつつある。LSI回路の低消費電力化には、LSI の電源電圧を下げることが最も効果的である。CMOS回路の動作電力は電圧の自乗に比例するので、電圧を1/3にすれば、単純には消費電力がほぼ1/10 になる。しかし、低電圧の条件下ではCMOS回路の動作が不安定になり、LSIの製造ばらつきやノイズなどに影響され、動作マージン減少、誤動作などの障害が、現状と比較して極めて増大する。つまり将来安心かつエコなアンビエント情報社会を実現するためには、情報通信・処理の主要素子であるCMOS トランジスタの動作電圧をしきい値電圧以下に低減できるLSI自動化設計技術と高信頼化設計技術の統合・融合したディペンタブルな低電圧LSI設計基盤技術が強く求められると考える。
 本研究は、高い信頼性を持つディペンタブルな超低電圧LSI設計技術の開発を目的とする。研究の目標としては、既存研究(カスタム設計)と異なり、自動化設計により、設計複雑度や設計周期を減らし、並びに回路全体の信頼性を高めることを目指す。また、実チップ設計により、既存研究と比較してエネルギーを低減し、並びに低電圧領域における設計タイミングのばらつきを改善することを目標とする。
 今年度では、主に以下の研究項目を行ってきた。
(1)超低電圧LSI自動化設計技術について
 具体的には、低電圧領域(サブスレッショルド領域)で動作する回路設計のため、①サブスレッショルド領域での遅延・電力のモデルの構築;②サブスレッショルド領域で動作させるため、既存のプロセスライブラリを用いて、トランジスタレベルでシミュレーションを行い、エネルギーが最小な電源電圧を選択できる合成手法の提案、及び③提案した最適エネルギー電圧選択手法をベースに上位レベル(RTLレベル)から低電圧による低エネルギー指向LSI自動合成フローの構築などの研究を取り込んだ。様々なアルゴリズムをコンピュータに実装し、評価実験を行った。既存のカスタム設計と異なり、合成時自動でエネルギー最小な電源電圧の選択ができ、Benchmark回路に適用し有効性を確認した。また、自動化設計により、設計複雑度や設計周期を減らすごとができた。
(2)ディペンタブルなLSI設計技術について 
 具体的には、①LSI回路動作時の遅延、温度変化および電源電圧変化の解析、及び②電圧変動により、ディレイ変動を検出・制御する技術の研究を行った。研究成果として、理論面から、80%以上の論理パス上発生した遅延エーラの検出ができた。