表題番号:2011A-873 日付:2012/02/28
研究課題量子光学に適した超高Q値微小旧型光共振器の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 青木 隆朗
研究成果概要
量子光学の実験的研究において、高Q値微小光共振器を用いて光を波長スケールの微小体積中に強く閉じ込めることで、光の量子性が増強され、通常の系では困難な非古典的光学現象の観測が可能となる。我々は過去の研究において107~108程度の高Q値微小トロイド型光共振器を用いてさまざまな非古典的光学現象の観測に成功した。しかし、これらの研究で観測された非古典的光学現象あるいは生成された光の量子状態の量子性は依然として低く、量子通信をはじめとした光学的量子情報への応用には不十分である。そのため、より高いQ値の微小共振器の開発が求められている。上記の研究で用いた微小トロイド型光共振器は、エレクトロニクス用途のシリコン基板上のシリコン酸化膜を材料とするが、低損失光ファイバーを材料とすることでさらにQ値の高い共振器の実現が期待される。そこで本研究では、低損失光ファイバーを材料として微小球型光共振器を作成し、109~1010の超高Q値微小光共振器の実現を目指した。

まず、光ファイバーを溶融し、表面張力により真球形状の微小光共振器を作製する技術を開発した。具体的には、被覆を除去しクラッド表面を洗浄した光ファイバーの先端を、CO2レーザーを用いて溶融した。シリカガラスはCO2レーザーの発振波長である中赤外領域に大きな吸収係数を持つため、CO2レーザーの照射によって局所的に加熱することができる。ただしこの方法では、流入熱量は加熱領域の体積に比例するが放射による熱の流出は表面積に比例するため、数μmスケールの微小な体積の高温加熱は困難であることも予想された。しかし、開口数の大きなレンズを用いてレーザーを集光することで、直径数μm程度の極細光ファイバーの先端であっても容易に溶融させることができた。

上記の方法で作製した微小球共振器のQ値を周波数領域において測定した。
テーパーファイバーを外部導波路として結合した微小球共振器に対して狭線幅の外部共振器型半導体レーザーを入力し、レーザー波長を掃引することで共振スペクトルを測定し、その幅からQ値を得た。結合損失を考慮し、共振器の真性Q値を見積もった結果、1×109を達成した。作製条件の最適化によって、更なるQ値の向上が見込まれる。