表題番号:2011A-872 日付:2012/04/04
研究課題次元論から見るフラクタル幾何学
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 小山 晃
研究成果概要
 次元論に基づく埋蔵問題を研究した。特に「どのようなn次元コンパクト距離空間がn個の1次元コンパクト距離空間の積空間へ埋蔵することが可能か」を研究した。その際、重要なヒントを与えるフラクタル図形が現れる。その1つが2次元トーラスを単体分割し、その2単体ごとに2次元トーラスとの連結和をとる操作を無限回繰り返して得られる「fractal Riemann surface」と呼ばれる野生的2次元連続体である。これは2つの1次元コンパクト距離空間の積空間に埋め込むことができ、「球面を除くすべての無機付け可能な曲面が2つのグラフの積空間へ埋め込むことができる」という大きな結果の動機付けとなった。また一般にn次元hereditarily indecomposable continuaというきわめて病理的複雑さをもつ連続体(具体例の構成はフラクタル図形と呼んでいよいものが多い)もn個の1次元コンパクト距離空間の積空間へ埋蔵することができる。この事実とその証明を元に上記の研究を進める足がかりを得た。ここで、それらの1次元コホモロジー群は無限生成であることに注意しておく。
 これらの例から、埋蔵可能なn次元多様体及び一般多様体の幾何的構造をその1次元コホモロジー群のZ加群としての階数から決定することを試みた。また, 一般のn次元コンパクト距離空間Xについても, 判定条件をn次元コホモロジー群の自明性と1次元コホモロジー群の階数の関連から研究した。

次元論をキーワードとして研究を進めている国内の研究者を集め、「第1回早稲田幾何学的トポロジーセミナー」(2012年2月28日(火)~3月2日(金)於:早稲田大学)を開催した。早稲田大学からの参加者は教員・学生7名他大学からの発表者5名その他参加者5名であった。ここでは私の研究以外にも幅広く次元論をとらえた講演が行われ、興味深い議論を展開することができた。これを機会に早稲田大学を中心とした野生的空間を研究する幾何学的トポロジーの拠点が形成することが期待できる。