表題番号:2011A-871 日付:2012/05/09
研究課題非アベール的数論の新展開
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 尾崎 学
研究成果概要
本研究において得られた主たる研究成果について以下で解説する:
代数体のガロワ拡大K/kにおける単数群のガロワコホモロジー群H^i(K/k,E_K)
は基本的な数論的対象である.例えばK/kが不分岐拡大の場合,H^1(K/k,E_K)と
H^2(K/k,E_K)は其々K/kにおけるイデアル類群のcapitulation kernelとcapitulation
cokernelと同型になっている.
一方,代数体の不分岐ガロワ拡大におけるcapitulation
kernelがどのようなアーベル群になるかという問題は古典的な重要問題であり,
これについては,Hilbertの定理94やFurtwaenglerの単項化定理という古典的結果や,
これらの一般化である鈴木の単項化定理が知られている.
これらの結果を踏まえて,GruenbergとWeissは一連の論文で次のような問題を
考察した:
「Gを有限群とする.このとき代数体の不分岐G-拡大に於けるcapitulation kernel
としてどのようなアーベル群が現れるか? 正確に言えば,K/kが代数体の
不分岐G-拡大全体を動くときのH^1(K/k,E_K)の同型類全体のなす集合X_1(G)
を決定せよ.」
GruenbergとWeissはこの問題の群論版については十分満足すべき解答を与えたが,
元々の問題を解決するためには,与えられた群論的状況を実現する不分岐拡大の
存在問題が解決されなければならない.
私は従前研究に於いてこの存在問題をGが有限p-群の場合に解決しているので,
この場合にはGruenbergとWeissの結果と合わせてX_1(G)を決定することができる.
さらにGが有限p-群の場合に,K/kが代数体の不分岐G-拡大全体を動くときの
H^i(K/k,E_K)の同型類全体のなす集合X_i(G)をi=0,2の場合にも完全に決定する
ことに成功した.
証明は問題を同値な群論の問題に帰着させて,それを考察することによって得られる.
i=2の場合はさほどの困難はないが,i=0の場合は,ある種のG-加群で,その
-2次元コホモロジー群が自明なものが存在するという群論的事実を示すこと
が鍵となる.そのようなG-加群を数論を用いて構成することによって証明
することができた.