表題番号:2011A-867 日付:2013/04/15
研究課題国際的規制が企業のイノベーションに与える影響の分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 准教授 長内 厚
研究成果概要
 本研究では、国際的規制・ルールを法律上の議論としてだけではなく、企業の戦略にどのような影響を与え、企業はそれをいかに活用するかという、経営学的な観点から分析を行ったものである。当初は、たばこ産業に関する規制を定めたたばこ規制枠組条約の批准国と非加盟国のたばこメーカーのR&Dの違いについて分析を行い、本年度中に論文として成果をまとめる予定であったが、当初の計画よりも時間をかけて大規模に分析を行う必要があるとが判明したため、本研究は来年度以降も引き続き行う予定である。
 本年度の成果としては、世界的なたばこ産業において、市場シェア1~3位に位置する、アメリカのフィリップモリス社、イギリスのブリティッシュアメリカンタバコ社、日本の日本たばこ産業株式会社の3社のうち、たばこ規制枠組条約に加盟・批准をした日本・イギリス企業2社と同条約の起草過程に関わりながら結果的に加盟をしなかったアメリカの企業との間に、どのような製品技術開発に差があるのかについて、3社の製品開発に関する2次データの収集を行い、規制が強化することを事前に念頭に置いた企業ほど、製品技術に関するイノベーションが活発に行われるという仮説を提示した。今後は、条約の起草過程の文書の中でこれら3カ国がどのような発言を行ってきたか、あるいは、各企業の製品開発について定量・定性両面からの分析を行い、規制強化とイノベーションとの間の因果関係の分析を行っていく予定である。
 当初計画では、本研究は神戸大学経済経営研究所松本陽一講師、同学大学院国際協力研究科柴田明穂教授との共同研究として進めてきたが、先述のようにより時間と人手をかける必要が生じたため、今後は京都大学大学院法学研究科の濱本正太郎教授にも協力を仰ぎ、継続的に研究を行う予定である。(ただし、本研究補助は申請者自身の研究分担にのみ充当し、他者への分担等は行っていない。)
 また、本研究における予備的な考察を元に、別の国際ルールと企業戦略との関係を分析した科研費基盤研究(A)の研究の一環として行った台湾・中国間の経済協定と日本のエレクトロニクス産業への影響を分析する研究を計画、実施した。