表題番号:2011A-858 日付:2012/03/19
研究課題漢字文化を生かした漢字、語彙指導法の開発-日中比較研究を軸に-
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 助手 李 軍
研究成果概要
 助手としての1年目、国語国文学科および早稲田大学国語教育学会の業務などに携わりながらも、自らの研究を大きく前進させることができた。目下、「漢字文化を生かした漢字、語彙指導法の開発―日中比較研究を軸に―」をテーマとする博士論文の執筆を進めている。
 博士論文は「第Ⅰ部 日中の漢字政策と漢字、漢字語彙指導」と「第Ⅱ部 日中漢字文化の比較に基づいた新しい漢字、漢字語彙指導の授業構想」の二部からなるが、今年度の中国における現地調査によって得られた知見は大きかった。第Ⅰ部第3章「中国における建国後(1949年後)の漢字教育政策」を執筆するために、2011 年8月16日から9月6日にかけて中国遼寧省瀋陽市で調査を行った。遼寧省図書館、瀋陽市図書館、瀋陽市教育局、瀋河区教育局、瀋陽市実験学校(小学部・中学部)、瀋陽市第九中学校(中学部・高等学校部)を訪問し、漢字教育政策に関する文献や政府関係の書類を入手し、小・中・高で漢字、漢字語彙指導の教育現場を見学した。
その成果の一部を論文としてまとめ、「中国における建国後の漢字教育政策の変容―「教学大綱」から「課程標準」へ―」という題目で早稲田大学教育・総合科学学術院の紀要『学術研究―人文科学・社会科学編―』(第60号)に投稿し、2012 年2月に刊行された。
 他方で、学会に参加して研究発表することも心掛けた。2011年5月28日、29日に開かれた第120回全国大学国語教育学会・京都大会と10 月29日、30日に開かれた第121回全国大学国語教育学会・高知大会に参加し、高知大会では「「反義複合語」を用いた漢字語彙指導法―「反義複合語」の字順と意味的構造をめぐって―」という題目で研究発表を行った。当日の研究協議の内容を踏まえて加筆したものを論文とし、「「反義複合語」を用いた漢字語彙指導の開発―漢字熟語の字順法則を探る―」という題目で『解釈』2012年5・6月号(国語教育特集)に投稿したが、査読を経て掲載される予定である。高知大会で発表した内容と『解釈』に投稿した内容
は、博士論文の第Ⅱ部第9章としてまとめる予定である。
 また、2011年7月に出版された『明日の授業をどう創るか―学習者の「いま、ここ」を見つめる国語教育』(町田守弘編著 三省堂)では、「日中の同音語を用いた新しい漢字、語彙指導法―「弓」「つる」「はる」をめぐって―」という章を分担執筆させていただいた。この論文は博士論文の第Ⅱ部第7章としてまとめる予定である。さらに、2012年9月に刊行される予定の『実践国語科教育法(仮称)』の第Ⅱ部第9章「漢字・語彙指導」の執筆を担当、原稿を2月に提出することができた。この論文は博士論文の中心となる研究内容をまとめたものである。
 上記のほかに、早稲田大学教育総合研究所の「早稲田大学における国語教育の研究」部会の活動に参加し、資料整理や資料調査などを行った。それらの資料を踏まえてまとめた論文を「早稲田教育評論」に投稿する予定である。